山田風太郎・サメマチオ「人間臨終図巻」

追読人間臨終図巻I (文芸書)

追読人間臨終図巻I (文芸書)

山田風太郎の「人間臨終図巻」のマンガ化。なんだそりゃあとまさに虚を突かれて、思わず買ってしまった。
「人間臨終図巻」は古今東西の著名人の死に際ばかりを描いて、享年順に並べた、まさに題名通りの本で、出版は1986年。菊判函入り豪華仕様の上下巻だったにも関わらず上巻17刷下巻14刷、その後普及版、文庫版、文庫新装版と売れ続けるロングセラーとなっている。
本書は、その中から120人を選び、出生順に一人一ページでエッセイ風に解説したもの。享年順の原作は八百屋お七(15歳)で始まり泉重千代(121歳)で終わる。国も時代も職業もバラバラ、武将も芸術家も、犯罪者も皇帝もただ享年でまとめてその死を並べている原作の透徹はなくなるが、ピタゴラスに始まり夏目雅子で終わる出生順もこれはこれで趣がある。現在2ndシーズン文豪編を連載中とか。
作者のサメマチオは、なんか見たことあると思ったら「魔法少女サン&ムーン〜推定62歳〜」の人だった。

人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻2<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻2<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻3<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻3<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻4<新装版> (徳間文庫)

人間臨終図巻4<新装版> (徳間文庫)

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2019/1-3月期終了アニメアンケート (第52回調査)

2019/1-3月期終了アニメアンケート (第52回調査)
http://anime-research.seesaa.net/
2019春調査(2019/1-3月期) 第52回
{総評、寸評など}
04,ケムリクサ,A
これだけの独特な世界観とキャラクターの物語を12話でまとめあげてるの凄い。全然詰め込んでる感じしないんだけど、一つ一つの要素が全て奥行きのある物語を感じさせて、ムダなところが少しも無いカッチリした構成。謎だらけの物語で、ほとんど説明らしい説明もないんだけど、見てるうちに納得させられちゃうし。アニメシリーズ1クール12本全て監督脚本演出一人でやって、さらに番外のプロローグだのエピローグだのまで作って、たつき監督には天才特有のエネルギーを感じる。しかしあの人形劇みたいな動きは、たつき監督の趣味なんだろうか。

2019春調査(2019/1-3月期、終了アニメ、63+4作品) 第52回
01,みにとじ,x
02,W'zウィズ,x
03,ラディアン,x
04,ケムリクサ,A
05,エガオノダイカ,x
06,けものフレンズ2,x
07,マナリアフレンズ,x
08,アイカツフレンズ!,x
09,デート・ア・ライブIII,x
10,ガーリー・エアフォース,x
11,revisions リヴィジョンズ,x
12,サークレット・プリンセス,x
13,おこしやす、ちとせちゃん,x
14,キャラとおたまじゃくし島,x
15,ブギーポップは笑わない,x
16,デュエル・マスターズ!,x
17,フライングベイビーズ,x
18,ぱすてるメモリーズ,x
19,モブサイコ100 II,x
20,おしりたんてい,x
21,えんどろ~!,x
22,火ノ丸相撲,x
23,キャプテン翼,x
24,賭ケグルイXX,x
25,五等分の花嫁,x
26,明治東亰恋伽,x
27,爆釣バーハンター,x
28,上野さんは不器用,x
29,ほしの島のにゃんこ,x
30,風が強く吹いている,x
31,約束のネバーランド,x
32,ドメスティックな彼女,x
33,荒野のコトブキ飛行隊,x
34,魔法少女特殊戦あすか,x
35,私に天使が舞い降りた!,x
36,不機嫌なモノノケ庵 續,x
37,ツルネ 風舞高校弓道部,x
38,とある魔術の禁書目録III,x
39,妖怪ウォッチシャドウサイド,x
40,ベイブレードバースト超ゼツ,x
41,グリムノーツ The Animation,x
42,転生したらスライムだった件,x
43,同居人はひざ、時々、頭のうえ。,x
44,宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち,x
45,ミッキーマウスロードレーサーズ,x
46,ソードアート・オンライン アリシゼーション,x
47,バミューダトライアングル カラフル・パストラーレ,x
48,レイトンミステリー探偵社 カトリーのナゾトキファイル,x
49,かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦,x
50,逆転裁判 その「真実」、異議あり! Season2,x
51,少年アシベ GO!GO!ゴマちゃん 第3シリーズ,x
52,ピングー in ザ・シティ 第2シーズン,x
53,3D彼女リアルガール 第2シーズン,x
54,あはれ! 名作くん 第3シリーズ,x
55,ねこねこ日本史 第3シリーズ,x
56,ピアノの森 第2シリーズ,x
57,キラッとプリ☆チャン,x
58,HuGっと! プリキュア,x
59,臨死!!江古田ちゃん,x
60,わしも wasimo 6期,x
61,雨色ココア SideG,x
62,BanG Dream! 2nd Season,x
63,B-PROJECT 絶頂*エモーション,x

64,(全8話) パパだって、したい,x
65,(全11+1話) マーベル スパイダーマン 第2シーズン,x
66,(特番) ポプテピピック TVスペシャル,x

67,(特番) ペルソナ5 Stars and Ours,x

展覧会「ラフ♾絵」

4rough.com
秋本治天野喜孝大河原邦男高田明美4人のラフ絵を集めた展覧会。4人の共通点はタツノコ出身ということ。会場は3331 Arts Chiyoda、秋葉原といってもむしろ末広町です。秋本治のコーナーではこち亀のネームがどっさり。最近は1話まるまるネーム公開ってのも珍しくなくなったけど、現物が壁一面に展示されてるとか、クリアファイルに挟んだ現物を何本も読めるとか、そうそうないでしょ。天野喜孝はラフというか習作というか、これまで見たことなかったんで、貴重だった。鉛筆でぐちゃぐちゃぐちゃっと描いてたり、筆でえいやっと描いたようなのが何枚もあったり、なんかスゴかった。大河原邦男はラフというか、クリナップされたメカデザインがかっこいいのからコミカルなのからとにかくいっぱい並んでた。
高田明美のラフはねえ。いいよお〜。昔の、ラムちゃんとかきまぐれオレンジロードとかから最近のまで。パトレイバーもあるし、そしてもちろんクリィミーマミがいっぱい。鉛筆で描かれたほっぺたの線の柔らかいこと!表情のチャーミングなこと!シルエットの魅力的なこと!自在に動き回る1本の線の躍動が、ここしかない!という唯一無二の位置に収まっている。何だろう、このラフ画の心奪われるような魅力は。なんかもう時間を忘れて見入ってしまう。高田さんが絵描いてるとこのビデオも流れてて、やっぱり見入ってしまう。でも絵描きが絵描いてるビデオって、基本的に見入ってしまうよね。
あと、4人がそれぞれ他の3人の持ちキャラを書き合うというコーナーがあって、秋本治が描いたボトムズとか檸檬風の森沢優とか、そういうのが並んでる。秋本治はやっぱ器用で、何描いてもそれらしくなる。大河原邦男は逆に何でも自分のメカにしちゃう。高田明美は描きたいものしか描かないというか、"D"とか女体化してるし。大河原キャラでガッチャマンだし。なんかムチャクチャかっこよかったけど。天野喜孝も、何というか、天野喜孝だなあと。ガンダムとか、ゴヤじゃん。マミはまあ、なんと言うか。こんな目の大きい女性の絵って、天野さん描いたことないんじゃないかなあ。ラフだとちょっとつり目っぽい感じで、天野風なんだけど、完成版はえらく儚げな天女風、て言うかマダム風じゃね?なお、このコーナーのみ撮影自由。
展示は16日火曜まで。夜は8時までやってます。

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"D"高田明美
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クリィミーマミ天野喜孝

黒田龍之介「世界のことばアイウエオ」

アイスランド語から始まってロシア語まで、世界の100言語について見開き1ページで綴ったエッセイ集。歴史や発音の簡単な解説だったりちょっとしたエピソードだったり、あくまで軽い読み物。著者は言語マニアで、読めない言葉の本でもとりあえず買って、眺めてるのが好きな人で、読者のほとんどが見たこともない文字で綴られる馴染みのない言語についても楽しそうに語っているのが読んでて楽しい。図版は無いので文字のサンプルとか見れないのは惜しい。
言語学の専門的な概念などについてはほとんど触れていないし、たまに出てくる専門用語についてもわかりやすい説明がついてるので気にならないのだけれど、ただ唯一「能格」はよくわからない。

自動詞文の主語と他動詞文の目的語が同じ形になると、その他動詞文の主語が能格という独特な形を取るという現象である。

と言われてもサッパリわからない。まあ複雑な文法構造の言語もあるんだなあと読み飛ばしてもいいのだが、文庫版解説には能格構造は「辺境言語の特徴」とも書かれており、それぞれ系譜不明な孤立言語として有名なバスク語コーカサス諸語、ブルシャスキー語と文法構造や語彙が全く異なる三グループのみが全ての時制で能格構造を持つという共通項を持ってるとか書かれると、俄然興味が湧いてくる。
wikipediaの「能格言語」を読んでもいまいちピンとこなかったけれど、ウロウロと検索していたらこんな記事があった。
www.asahi.com
地震列島 M9誘発」と言われると、「地震列島がM9を誘発した」と解して、??となる。「地震列島をM9誘発」でもわかりづらい。「地震列島 M9が誘発」ならすぐわかる。ここでは他動詞文で、主格が区別されている。
日本語だと、自動詞文「ドアが開いた」、他動詞文「君がドアを開けた」と、どちらでも「が」をつけて主格を示す。で、格助詞を省略して「ドア開いた」とも言えるだろう。その時「君がドア開けた」と「君ドアを開けた」では前者が自然じゃない?という感じ。つまりここで、自動詞文の主格「(ドア)開いた」と他動詞文の対格「君が(ドア)開けた」が、どちらも格助詞省略という「同じ形」になっている。ということで、能格構造の雰囲気をわずかながらも味わえるということだって。

ケムリクサ #12

赤い木とラストバトル。りく、りょう、りょくのお姉ちゃんズ三人別々に出てこれるんじゃん。一度に一人ずつだったのも、やっぱりケムリクサ節約のためかな。前回リリが言ってたのって、下にお船の地球があるんじゃなくて、お船の下に地球があるって事だったのね。姉妹がそれぞれ口調を変えてたのって、わざとやってたんですね。
記憶の葉を再生中に赤い根が襲ってきて、わかばはりんが起きるまで時間を稼ごうとケムリクサを駆使して戦う。何度も死にかけるが、間一髪のところをケムリクサで助かる。加勢に現れた三人お姉ちゃんズが、赤い木をケズりまくる。みんな、さすが強いね。一方後方のりつ、りな、シロは巨大赤虫に包囲されつつ、ミドリちゃんの枝をりんに届ける。ということで、最後はりんが見事にトドメをさして、わかばを助ける。
赤い木が消えた後には裂け目があり、そこが船の果てだった。船の外には、豊富な水と豊かな緑が広がっていた。
いやあ、キレイにハッピーエンドでまとめたねえ。りなちゃんズは一人になっちゃったのかな。ミドリちゃんも枯れてたっぽいけど、りつもシロも生き延びたし。まあ謎は残ったけど、最終2話で伏線回収詰め込んで、アクションで盛り上げて、設定も世界観も不思議だったけど構成はストレートに王道展開でした。テーマもブレないし。一貫して「好きなことを貫ぬく」という話でした。好きなことしてる時にキラキラしてるんだもんねえ、こういうキッパリした演出は珍しい。
とにかく、1クール12本のアニメで終わらせるには勿体無い世界でした。しかしこの大仰な身振りで動くのって、人形劇っぽい動きだな。

渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

自由なサメと人間たちの夢 (集英社文庫)

「ラメルノエリキサ」で小説すばる新人賞を受賞した渡邊優の受賞後第1作にあたる短編集。相変わらずキレのいい文章で、読んでいて気持ちが良い。作者の描く人物は、輪郭のはっきりした、いわばキャラの立った人物で、自分の核となる欲望を抱えたストレートな人間なんだけれど、これはキャラクター小説というわけではない。「皆、各々が信じる夢の中で、生きている」人間たちがすれ違い、あるいは交錯する世界。そして、自由に泳ぐサメ。
「ラスト・デイ」の宮村朋香は死に憧れて、心の底から死にたいと思っている。しかし死が一度きりの体験であることを思うと、もったいないという思いがあって、自殺未遂を繰り返している。
「ロボット・アーム」の後藤太樹は事故で右手を失い、義肢を得た。最初は普通の腕で十分と思っていたが、強化オプションで握力を強化し、やがてより強い「力」が欲しくなっていく。
「夏の眠り」の理志は、明晰夢を見るための訓練を重ねる。明晰夢とは完全に自分の意志でコントロールできるリアルな夢のことである。だが彼が夢の中で叶えたかったものはなんだったのか。理志は夢の中で自分と向き合うことになる。
「彼女の中の絵」の古賀隆は美大出のアマチュア画家で、オリジナルの絵が描けずに趣味で模写を続けている。記憶の中の絵を探している女性と出会い、朧げな絵のイメージを聞いているうちに、初めての創作意欲が湧いてくる。
「虫の眠り」は、「虫」とあだ名をつけられ、いじめられている高校生小野寺知実に関する話。知実が美結をボールペンで刺したところから始まり、周囲の人間から見たそれぞれの知実像が語られていく。有吉佐和子「悪女について」とか岡崎京子「チワワちゃん」とか、周囲の人間のバラバラな証言から人物像を描いていく作品はいくつかある。互いに矛盾するような証言を組み合わせていった最後に、市民ケーンの「バラのつぼみ」のような真実が現れたりすることが多いのだが、そうした期待は裏切られる。
表題作と言えるんだろう、「サメの話」はサメを飼うのが夢で、キャバ嬢やって稼いだカネをつぎ込んでサメを飼うヒロインの話。マンションでワニ飼ってた岡崎京子「Pink」をちょっと思い出す。ヒロインはお店でスズちゃんと呼ばれてるが、実は本名が高橋鈴香である。本名そのまま源氏名にしたのか。スズちゃんは自堕落で短期で情緒不安定でどうしようもなくって、そんなダメな自分を持て余してる。そんな自分に美しい秩序を与えてくれる存在が、サメなんだと信じてる。サメがいれば自分も少しはマシな自分になれるのではないかと思い、それがダメならばサメに食べられたいと思う。
最後の「水槽を出たサメの話」は「サメの話」の続きで、サメ視点。サメは自由だ。水槽を出たからではない。夢の中に囚われ、各自の夢の中で生きている人間たちとの対比において、ただ生きて、楽しむ、自由なサメ。

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ケムリクサ #11

記憶の葉の内容が再生される。なんか怒涛の情報量で、一気に伏線が回収されていく。リンたち姉妹が地球人由来で、ワカバの方が宇宙人だったのですね。廃墟と化した世界に見えたのは、制作途中のコピーだった。
ワカバは元々宇宙人のケムリクサ研究者のわかばだった。地球文明の発展過程をケムリクサで複製保存する作業中に、地球人の少女の死体を間違って複製して、そこから再生されたのが「最初の人」リリ。「お船の地球の上」にケムリクサコピーを作ってるらしいけど、現地人に気づかれたらダメだとも言っている。上空にそんなもん作って気づかないわけないと思うんだが、何か隠蔽機能があるとか、別次元だとかか?「お船」と言ってるのは、「地球」が惑星じゃなくて移民船とかそんな感じ?
ルンバみたいな白虫ロボットは「ヌシ」が正式な名前で、リリが「ムシ」と呼んでるのだった。赤虫のヌシってのは、これなのね。
再生リリはケムリクサの達人で、研究者のわかばも思いつかないような応用を思いつく。根詰めて作業してるわかばを心配したリリは、ケムリクサを止めるケムリクサ、赤いケムリクサを合成するが、それはいきなり暴走した。
わかばはリリをできる限り遠くへ逃し、暴走を食い止めるために一人で赤いケムリクサに立ち向かう。リリはわかばを助けるために、ケムリクサで自分自身を変身させる。
11話を要約した影絵からEDに入って、EDからオーバーラップでCパートに入る。気がつくとリンは一人きり。辺りを探し回ると、流血しながら赤虫の前に立ちはだかるワカバが。
うわあ、これ最後どうなっちゃうの。