屍鬼 第悼と悲屠話

正雄が死んだら今度は郁美、とイタイ人材には事欠かない。まあ、室井さんもヘンだし、敏夫も暴走し出して、マトモな人はいなくなっちゃうんだけど。
拝み屋の郁美が、兼正は起き上がりだと言い出す。イカれたばあさんの戯れ言とバカにしながらも疑惑が広がっていく。吸血鬼の仕業だということをどう村人に納得させようか悩む尾崎敏夫は、郁美を利用しようと騒ぎに便乗して桐敷家に向かう。しかし、出てきた当主は生きた人間だった。疑惑は真っ向から否定されてしまう。その晩、郁美を訪ねてきた女は屍鬼であった。
もともと原作者の小野不由美が吸血鬼に注目したのは、十字架だのニンニクだの日光だの、これだけ弱点が多くてしかも有名な化け物って、すごく弱いんじゃないだろうかと思ったからだそうで、それだけに吸血鬼は身を守るために、人間に悟られないよう二重三重の策略を巡らせる。吸血鬼と戦おうとする側は、味方を増やすためにまず敵の存在を納得させなければならない。互いに周りから固めていこうという、空気を読み合うような駆け引きが面白い。