三好昌子「京の縁結び 縁見屋の娘」

2017年「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作。ミステリーではないけれど、なぜかこのミス新人賞に応募して、優秀だったので優秀賞を取ってしまったという人情時代小説、というか伝奇スペクタクルというか。天狗とか出てくるし、ミステリーとは言い難い。でも、確かに面白いし、上品な文体で文章力もあり小説としての完成度も高い。これがデビュー作というのも不思議なほど。
主人公のお輪は京で代々口入屋を営んできた縁見屋の跡取り娘。縁見屋には女の子しか生まれず、しかもその娘は26で死ぬ。お輪の母親は彼女がまだ小さい頃、26歳で死んだ。その母親もまた、26で死んでいる。縁見屋の娘は祟られている、そう噂されているのは、お輪も知っていた。これまで気にしないようにしていたお輪だったが、ある日店にやってきた帰燕と名乗る行者に会ってから、不思議なことが起こるようになってくる。こう書くと何やらおどろおどろしく思われるかもしれないけれど、ホラーではない。むしろファンタジー風味か。
一族の祟りとか祖先の業とか出てきてもエグいことにならないのは、渦中のお輪がその呪いの主を怖がっておらず、むしろ呪縛に囚われた魂を助けたいと思うからだろう。その心情に自然に共感させる描写は巧みである。適度に挟まれる、心情を象徴するようなシーンの描写が、美しいビジュアルとともに強く印象に残る。作者が洋画科専攻だというのは関係してるのだろうか。