那州雪絵「魔法使いの娘ニ非ズ」

魔法使いの娘」及びその続編「魔法使いの娘ニ非ズ」の最終巻。現代を舞台にしたゴーストハンターもの。
主人公鈴の木初音は自称「普通の女子高生」、でも父親が魔人と恐れられる日本一の陰陽師なので、普通の高校生活はハナから無理。問題の父親、鈴の木無山は何でも出来る、向かう所敵なしの「魔法使い」で、名前の出せないような重要人物を何人も顧客に抱えて、呪殺だとか呪術合戦だとか、表沙汰にできないような危ない仕事も色々やってるらしい。ただ日常生活や俗世界に関わる一切のことに関しては無能力で、家事一切は初音が取りし切らざるを得ない。そもそも孤児で鈴の木流の道場で育てられた無山は中身が子供のままだし、妖怪との付き合い方は得意でも、人との付き合い方はトンと分からない。初音に後継者教育と称してオカルトがらみの難題を平気で無茶振りしてくる。無山に振り回されつつ、初音も生育環境のためか、血は争えないというのか、何やら才能を発揮してオカルト的な事件を結局解決していく。前向きでクソ度胸のある、元気な初音を筆頭に魅力的なキャラが満載で、ホラーな部分はしっかり不気味だし、なんども読み返せるシリーズ。式神とかは出て来るけど、派手な能力合戦とかではなく、駆け引きや計略がメインのプロットは展開の妙が味わえる。
シリーズ最初の方は、和風ホラーテイストのオカルトコメディという感じだったけれど、初音の出生の秘密が明かされると、話も次第にハードモードになっていく。息子が父親を乗り越える、という話はよくあるけど、娘が父親を乗り越える、という話は珍しい。
続編は、陰陽師にはなりたくないと言いながら、とは言っても他に出来ることもなく、オカルトコンサルタントとして曰く付き不動産の除霊とかしながら暮らすことになった初音の活躍で、陰陽師として独り立ちして生きる覚悟を決めるまでの話。

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