内山純「ツノハズ・ホーム賃貸二課におまかせを」

鮎川哲也賞受賞作家の第3作。いわゆる日常の謎ミステリを得意とする作家で、不動産屋さんが関わるちょっとした謎解きを中心にした人情系の連作短編集。西新宿を創業の地とする中堅不動産屋で、多摩支店から本店賃貸二課に配属になったバリバリの美人営業ウーマン神崎くららと、バカ正直が取り柄の澤村先輩のコンビが、下宿人の妙なクレームを解決したり、唐突な入居申し込みキャンセルから犯罪の匂いを嗅ぎつけたりとか、色々と謎を解き明かして契約に結びつけていく。ミステリ風味のお仕事小説という感じ。細かいエピソードで丹念に伏線を張ってプロットを組み上げていく構成は巧みで、軽妙な会話で読ませていくだけに、最後に一気に解説が来る謎解き部分が妙に説明っぽく感じられた。前2作は安楽椅子探偵だったけど、これは不動産の営業という職業柄あちこち歩き回ってヒントを見つけてくることで謎解きをするスタイルだから、その展開を読ませた方がもっと面白くなったように思う。最後にサプライズを持って来る形式にこだわらずに、どんどん途中からネタを割っていって人情噺でまとめた方が読みやすかったのではないだろうか。
ヒロイン?の神崎くららが、前2作のそれぞれの探偵役といとこ同士、ということで前作で探偵役だったカフェチボリのマスターが友情出演してたり、とかちょっとしたサービスもあります。
土曜はカフェ・チボリで

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