川端裕人「川の名前」

川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

理系小説家って少年ものが合うのかなあ。瀬名さんも博物館が一番面白かったし。まっすぐに突き進んでいく少年らしい好奇心がどこまでも直進できる舞台を整えるためのバックボーンをきっちり書き込めるからなんだろうか。
主人公の小学生が川で経験する一夏の冒険譚。人物の配置からエピソードの組み方から、なにひとつ無駄なところがない。菊野と手嶋、ゴム丸と海野、それぞれが出会うことで成長課題が生まれ、乗り越えられていくさまがストーリーを動かす心理的なエンジンとして常に動いている。カヌーやミミズの薬、そしてペンギンといったモチーフが積み上げられていくエピソード同士を連結し、「川の名前」というメインテーマにつなげている。もう「多摩川小説」と言ったっていい。
手堅い構成が生むうねるようなテンポでクライマックスとなる嵐の中の冒険までおおいに盛り上げてくれました。
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