谷口ジロー「いざなうもの」

谷口ジローの絶筆となった未完成原稿を含む、国内単行本初収録作品集。氏が日頃携帯していたモレスキンのノートからイラストが収録されていたり、最後の作品集という感じがひしひしと伝わってきます。装丁も特殊だし、目次に全部書誌情報がついてるのはマンガでは初めて見た。
「彼方より」はSF短編、「何処にか」は小泉八雲、「魔法の山」はジュブナイル、そして絶筆となった「いざなうもの」は内田百間とバラエティがあります、小泉八雲ラフカディオ・ハーンは「坊ちゃんの時代」でも描いてましたね。「魔法の山」は、お話しは少年マンガで小学生の兄妹の不思議な冒険を扱ったものですが、谷口ジローの絵で描くと少年文学になってしまいます。「いざなうもの」は内田百輭の「冥土」が原作で、薄墨、鉛筆、ホワイトを主に使用した新しい作画法による意欲的な作品です。幻想的な内容に合わせた類例の無いマンガで、後半下書きのままなのが惜しまれますが、なんだか本当に誘われてしまったような怖さが残ります。