明治カナ子「坂の上の魔法使い」

「一変世界」の明治カナ子のファンタジー。町外れの坂の上に、魔法使いが子供の弟子一人と住んでいる。魔法使いのリーはかつて栄えた魔法王国セロハンの王に仕えた偉大な魔法使いで、弟子のラベルはセロハン最後の王の忘れ形見であった。真面目で融通のきかないタイプのリーと、ちょっとアホなラベルの、真面目になる程側から見るとおかしいという類のむっつりコメディという感じでのんびりと始まるが、セロハン最後の王となったアレット王子とリーの秘められた関係が、物語に暗い影を落としていく。
薄気味悪い魔法世界と奇妙なギャグセンスのアレンジが独自の世界を作ってて、クセになる。「一変世界」の方は人外寄りだったけれど、これは一夜で滅んだ魔法の王国とか、王と臣下の秘められた愛情とか、今市子っぽいBLロマンの切なく美しいお話が語られる。
でもこれはあくまでラベルとリーの物語で、リーとリリドに引き裂かれたリーがラベルに救われるという構造になっている。エピローグではいきなり50歳になったラベルが、リーと共に、人間と魔法使いの仲介を初めていて、これは続編が出てる。ちなみに魔法使いはあんまり歳をとらないので、リーはあまり見た目が変わらないし、ラベルも20代くらいにしか見えない。さらに魔法使いが若返るエグい方法もあるんだけれど、これは本編で読んでください。記憶の糸 2 ?坂の上の魔法使い? (H&C Comics)
記憶の糸 3 ?坂の上の魔法使い? (H&C Comics)
記憶の糸 4 ?坂の上の魔法使い? (H&C Comics)
記憶の糸 5 ?坂の上の魔法使い? (H&C Comics)