高田大介「図書館の魔女」

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

東西大陸に挟まれた海峡に覇権を敷く一ノ谷の王城の背後に聳え立つ世界最古の図書館を統べる「高い塔の魔女」マツリカは口のきけない美少女であった。鍛治の里に生まれ育った少年キリヒトは王宮の命により、マツリカの手話翻訳者兼司書見習として図書館に仕えることになった。
マツリカは論理的で頭脳明晰、古今の書物を繙き数多の言語に通じ、一ノ谷の内政に隠然たる影響力を持つ、強気な少女。政敵を相手に情報戦を繰り広げる一方で、キリヒトとイチャイチャしてます。繋いだ手の中の指の動きで意思疎通する手話ならぬ指話をキリヒトと開発したり、一緒に秘密の遺跡探検したり。しかし一ノ谷の覇権に挑戦するニザマ帝国の暗躍により、海峡情勢は風雲急を告げようとしていた。
異世界ファンタジーですが、魔法も妖精も怪物も一切出てきません。情報戦を制し、交渉で状況を覆すという政治小説です。僅かな情報から情勢を的確に分析し、微かな違和感から陰謀を暴くというミステリでもあります。ニザマ帝国の刺客との攻防とか、サスペンスの盛り上がりもたっぷり。
荘重な文体の風格は最近では貴重です。ギリシャやトルコの北に中国があるような、いわゆる中世ヨーロッパ風とは一味違う世界観も刺激的です。全4巻。その後の世界を少し舞台を変えて描いた続編も出ています。国際政治の中心の話から、一転して大国に翻弄される小国の、しかも社会の最底辺の話になるので戸惑いますが、最後には図書館の面々が登場するのでご安心ください。

図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 烏の伝言 (上) (講談社文庫)

図書館の魔女 烏の伝言 (上) (講談社文庫)

図書館の魔女 烏の伝言 (下) (講談社文庫)

図書館の魔女 烏の伝言 (下) (講談社文庫)