- 作者: 蝸牛くも
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2019/01/24
- メディア: Kindle版
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主人公は今川氏真、桶狭間で破れた今川義元の息子。塚原卜伝に新当流を学んだ一方、蹴鞠や和歌に秀でた文化人。武田、徳川に攻め立てられて駿河を失い、妻の実家である北条を頼るも結局追い出されて徳川家康の庇護下に入り、信長に蹴鞠を披露したりして戦国時代を生き抜き天寿を全うした人物。江戸時代の評価は、歌で国を滅ぼした暗君とか叩かれていたわけだけれど、蝸牛くもは家も国も一蹴して好きに生きた自由人として描いた。
本書は、北条を追い出された氏真が、家康の依頼を受けて信長に蹴鞠を披露するため妻と二人連れで浜松から京に上る道中の物語。ただし蹴鞠披露はあくまで表向き、実は手にした者が天下をとると言われる天下刀、義元左文字を信長に届けることこそが真の用向きであった。そして、刀を狙い氏真の命を狙うのは甲賀金烏集。次々と襲いかかる恐るべき忍術使いに、氏真は新当流剣術と、飛鳥井流の蹴鞠で立ち向かう!
ダークファンタジー「ゴブリンスレイヤー 」の作者だけに伝奇風味ですが、そこここに時代小説愛が炸裂しています。婆娑羅娘な奥方、蔵春もいいキャラです。しかもまた伊東悠の表紙イラストが、二人の魅力を一目瞭然で伝える、いい絵なんだよなあ。
蝸牛くもの書く人物って、ゴブスレにしても氏真にしても、すごい重たい過去を背負ってても屈託がなくてストレートなんですよね。それがうまく活きて、気持ちの良い活劇に仕上がってます。