- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2019/07/06
- メディア: 単行本
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主人公間貫一をはじめキャラの名前や基本的な枠組みは踏襲してるのだけれど、ヒロインの鴫沢宮は鴫沢美也になっている。バブル崩壊以降の日本を舞台にした本作では、美也は別に金に目がくらむというわけではない。ただ自分に自信の持てない空虚さを突然降って湧いた「結婚」で埋めようとしたばかりである。貫一も美也の裏切りにあって悲憤慷慨恨み言を言うということもない。感情を捨て、大きな欠落を抱えたまま、それを見ないようにひたすら生きていく。ショックで茫然自失した貫一が着の身着のまま出奔し、ワープアとなって生きていくあたりがなかなか現代です。
結末はびっくりするほど呆気ない。旧劇場版エヴァの「終劇」を思い出す。どこにも救いの無い、「絶望」そのものだけがポッカリと口を開けている。