アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」

「バーナード嬢曰く」4巻でも出てきた、上巻読んだら下巻が読まずにはいられなくなる超強力なページ・ターナー
編集者のスーザンが、編集長から渡された、世界でベストセラーとなった名探偵アティカス・ピュントのシリーズ最新作の原稿のプリントアウトを、週末にワインとトルティーヤを準備して読み始めるとことから始まる。スーザンはそのベストセラーシリーズの担当編集者で、良質なミステリを期待していたが、しかしその作品はそんなものとは全く違っていた。「この本は、わたしの人生を変えた」「あなたはちゃんと警告を受けた」と読者を煽りに煽って、その原稿「カササギ殺人事件」が始まる。
1955年イギリスの片田舎を舞台にした、アガサ・クリスティ・リスペクトのクラシックな本格ミステリ。メイドの転落死が小さな村に引き起こしたゆらぎが波紋となって次第に広がっていく。どこか不穏な謎の事件が続き、そして無残な殺人事件が発生する。そこに余命宣告を受けた名探偵アティカス・ピュントが挑む。
この、作品内作品と言える「カササギ殺人事件」自体も、すごく面白いミステリなのだが、そこに更にその原稿自体にまつわるミステリが覆いかぶさる。入れ子状になっているのだ。いわゆる作中作ミステリである。その両者の絡ませ方が巧妙で、とにかく一気に読まされてしまう。メタミステリもいろいろ読んだけれど、これだけ豪華というか贅沢なものも珍しい。