今井哲也「ぼくらのよあけ」

2038年、人工知能を搭載した家庭用オートボットが一般家庭に普及しているような未来。小学生の沢渡ゆうまの家のオートボット、ナナコをハックしたのは、1万2千年の歳月をかけて地球にやってきた異星からの宇宙探査機に搭載された人工知能だった。2010年にトラブルで地球に墜落した「二月の黎明」号は、団地に偽装して28年間休眠していたのが、ふとした偶然でナナコの人工知能と通信がつながったのだ。ゆうまは友達と一緒に、故障した宇宙船を再び宇宙へ帰そうと奮闘を始める。少年少女たちの一夏の冒険の物語。
アリスと蔵六」の作者ですね。王道の少年マンガで、しっかりSFになってるし、話の膨らまし方や親との関係の絡め方などうまく構成してあります。2巻できっちり終わってるのも嬉しい。劇場映画1本分って感じ。子供はちゃんと子供だし、大人はちゃんと大人やってるのがいいですね。その辺は「アリスと蔵六」にもつながってます。
話の中で、いじめが出てきます。女子のいじめなんだけど、特に「いじめの解決」という話にはなってない。いじめられてた子が、追い詰められず、別のグループで楽になれるという話ではあるんだけれど、敢えていじめと対決したりはしない。ただ、女の子たちの人間関係が、いじめる対象を設定しないと維持できない極度に不安定な関係として描かれてたのは興味深かった。
地球のオートボット人工知能は、人間と自然な会話ができていて、それは勿論すごいんだけれど、あくまで擬似自我の見せかけだけで、自分で問題設定するわけではないあくまで現在の延長上の設定です。まあそれだけではないんだけれど、それよりずっと宙に浮いて動き回ってるのは謎のハイテクノロジーですね。マンガ的にキャラのバストショットと同じ画面に収まってた方がいいし、その方が可愛いからだろうけど。そう考えると、床を歩き回るペットロボットと人間の会話を自然に流せるよう構図を工夫しまくってる細野不二彦の「バディドッグ」ってすごいね。