GUNSLINGER GIRL

恋人たちは別れ、記憶は忘却の淵に沈んでも、物語だけは残るのだ。原作の中でもとりわけ好きなエピソードのひとつ。
鏡に映るヘンリエッタ、マジックミラーの向こうのヘンリエッタ、作った死体の数を誇るヘンリエッタ。横の部屋で密かに見守るジョゼもマルコーも、義体の少女たちに人間としての想いを見いだしたいと望んでいる。義体の少女たちは勿論人間だ、人間のはずだ。しかしジョゼは不信にとらわれ、マルコは裏切られる。「条件付け」による偽りの過去、植え付けられた意思に基づく自分は、鏡の中の影のように偽りの幻なのか。アンジェリカが手にした新しい可能性は、不幸の別名にすぎないのか。アンジェリカと担当官との絆は変わらない。アンジェリカにとって関係が強まったり、切れたりすることはない。時間はただ流れ去り、アンジェリカに影響を与えうるのが自分ではなく「条件付け」であることにマルコは打ちのめされる。しかし、マルコに言われるままに走り続けるアンジェリカ以外に、「本当のアンジェリカ」などは、いないのだ。
人は、自ら信じる過去に拠って立っている。