忘却の旋律 世界を貫く矢のように

しばらくぶりに見たら、たいへんなことになってました、っていうかなにがなにやら。でも、話の中身はわかんなくても(多分、ずっと見ててもわかんない)演出というか情緒の動かし方の辻褄があってるから見てて面白いし、気持ちがいい。昔の小劇場演劇みたい。野田秀樹とか。サブタイのセンスとかはもうちょっと古い、清水邦夫とかアレン・ギンズバーグとか、そんな感じか。「生まれ変わった木の葉のように」とか、よくわかんないけどカッコいいの。
「いいか、きみは選ばれたわけじゃない、これからきみが選ばなきゃいけない。
 そして、選ぶなら、覚悟がいる。」
「だいじょうぶ?」
「大丈夫。ぜんぜん怖くない。」
決断するということはひどく孤独な行為です。なにかを選ぶとは、別のなにかを捨てることであり、覚悟とはただ一つ選んだそのことのためにすべてを捨てる決意です。迷いがなければ怖れも消え、従容として運命を受け入れるならば、世界は甘美な歌声に包まれます。

物語がクライマックスに達して、さあどうなる、というところで外して内面描写に向かうのはエヴァ以来ではあるけれど、チャイルドどらごんがカラオケで歌う「てのひらの光」の破壊力には唖然とするばかり。「宇宙」で「そら」と読ませるんならガンダムだけど、「うみ」だったら松本零士か。波動砲でてきてたし。エヴァでは拒絶の言葉が電話の受話器から果てるともなく流れ出てきたけれど、忘却では、部屋のドアを開けては一言毒づいてバタンとしめるいかにも「外野」という扱いでした。なんか鳩時計のハトみたい。