魔法少女リリカルなのはA’s #09 クリスマス・イブ

絶叫するヴィータグラーフアイゼンの一撃で屋上の一角は猛火に包まれる。燃え盛る炎の中からゆっくりと現れる白いバリアジャケット。
「悪魔め」
悲し気にひっそりと立つなのはに、なぜか目を合わせられないヴィータは目に涙をためてしぼり出すように呟く。闇の書の造り出した疑似人格でしかないヴォルケンリッターの騎士にとって、闇の書そのものの機能障害は理解できない。夜天の書が闇の書となったとき、騎士たちもまたどこかこわれてしまっていたのかもしれない。さらにマスターであるはやてに対して生じた未経験の感情に騎士たちは混乱し、予めプログラムされている、闇の書への忠誠とが引き起こす矛盾に対応できないでいる。騎士たちは闇の書、つまり自分たち自身の存在そのものがはやての身体を蝕み、彼女の生命を脅かしていることを認めることができず、闇の書の完成という偽物の希望にすがりついた。だがその完成が近付くにつれ、目を背けていた欠落は獏とした不安となってヴィータに影を落としていた。ヴィータは、なのはの話だけはどうしても聞きたくなかった。
はやてと騎士たちの絆を知ったなのはは、闇の書の完成を阻止しはやてを救うために騎士たちの希望を打ち砕かなければならないことを悟った。その絆を利用し、つけ込んで、騎士たちに自らを封印させなければならないのだ。騎士たちを救える方法があるのかどうかはわからない。だがはやてを救う方法はある。
「悪魔で、いいよ」
なのはがさびしそうに答える。ゆっくりと上げた右手に出現するレイジングハートエクセリオン
「Accel-mode drive ignition」
アクセルモード起動と同時にカートリッジがロードされる。なのはは静かに金色の杖を構えると、ヴィータに向かってその決意を告げる。はやてか闇の書か、ヴィータはどちらかを選ばなければならない。
「悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから」

クリスマスイブになのは達四人が計画したサプライズプレゼントのおかげではやての病室で敵同士が鉢合わせ。申し訳なさそうに立ちすくむなのはとフェイト。プレゼントを披露するすずかたちの楽し気な様子をよそに張りつめる緊迫感。それはここまでずっとはやてと騎士たちのふれ合いを追ってきた流れの中で、もはやなのはもフェイトも悪役になってしまっているという居心地の悪さです。それを逆手にとって見事にひっくり返したのがAパート最後のなのはのセリフでした。これは鳥肌モンの演出でございました。
多分に脳内補完入ってますが、シグナムやヴィータの目が髪に隠れている演出は、現実から目を反らして話し合いも拒絶している頑さを示していたのだと思います。

「強いあなたに立ち向かうには、これしかないと思ったから」
「止めます、私とバルディッシュが」
Bパートはフェイトのセリフが光りました。受けて立つシグナムも「どれほどの友となれたか」と渋くキメてます。防御を捨てて機動性に賭けたフェイトは、姿を消して忍び寄っていた仮面の男も見切ります。でも、二人目の仮面の男の出現に虚をつかれてしまいました。仮面の男たちは騎士たちのリンカーコアを奪って闇の書に捧げると、今度はなのはとフェイトの姿を借りてはやてを追い詰めます。結局イヤボーンの炸裂ではやては闇の書の意思と融合してしまいます。

闇の書の本当の名前は、と言われて思わず詰まるヴィータ。このシリーズも名前がポイントですか。サブタイから「なの」が消えて話が一気に走り出しました。しかし、変身バンクも1回しか使わないんだったら「バンク」じゃねえよなあ。
騎士たちがこのまんま退場では「なのは」的にはどうかと思うんで復活するんじゃないかと期待してるんですけれどもダメでしょうか。