BSマンガ夜話 「よつばと!」あずまきよひこ

いよいよ今回の目玉です。ゲストは女優さんで、ふつーの読者代表と思ってたらいきなり「モノローグが全然ない」とか鋭い指摘をかましてレギュラー陣を動揺させてました。大月さんが毎週言ってた「リテラシーの高さ」ってこういうことなんでしょ。そんな驚かなくったって……
よつばの日常をずっと描いてくんだけど、常に外から眺めてる視線で、モノローグとかで内面を描くようなことはしない。よつばの行動だけが描かれて、それをどう感じるかは一切読者に委ねられている。こういうのはマンガ夜話の読者視点担当としてはやりにくいんだと岡田斗司夫は前半ブツブツ言ってました。よつばのかわいさが、なにも知らないからなににもとらわれない子供の唐突さだったり奇抜さだったりに対して見る側=大人の側に生まれる感情で、新鮮な世界にふれたよつばによって再定義されていく世界が読者の日常を新たに見せていくというようなことなんだと思いました。
あずまきよひこは、ストーリーは信じないけどキャラは生かしたいんだそうです。物語を切り捨ててキャラの表現にこだわるから、コマをぜいたくに使ってよつばの動きをていねいに追いかける描写になる。よつばの動きに合わせてカメラがわずかにパンするような構図を夏目の目で解説してました。
いしかわじゅんは、「あずまんが大王」は全然評価してなかったけど、次に描いたのがこれだったということで作者の挑戦を絶賛してました。たしかに「あずまんが大王」って、最初見たときは強烈な既視感にめまいがしたもんなあ。でもハマったけど。「こういうのが好きなんでしょ」って出されると見透かされてるのが悔しいけれど、たしかに好きだもんなあ。こういうのが読みたいなと思ってたまさにそういうマンガだったから。
「非日常からの侵入者が日常を輝かせる」というのは藤子不二雄から連綿と続く落ちものファンタジーの構造なんだけれど、「よつばと!」は侵入者を「生まれてきた子供」にすることでぐっと現実に近づけた。一方で、家族という物語を消し去ることでファンタジーであることのパワーを保っている。