借りぐらしのアリエッティ

ジブリ新作。監督の米林宏昌ジブリ作品の原画をずっと担当していた人で、これが初監督作になる。
小人から見た世界、の説得力が高い。ジブリの美術の力もあるし、ボタンの飾り皿やえんぴつキャップの一輪挿しのような小物を利用するアイデアの面白さもある。小さなポットから注ぐお茶が表面張力で丸まってるとか、水や火の描き方、音の響き方の臨場感など、いくつもの配慮がなされている。借りぐらしの小人、という設定を絵にしたイラストボードを、出来る限り忠実に動かしました、という映画。豊穣なイメージの世界をおもうさま満喫できます。
ベンツを運転してる伯母さんが竹下景子で、ドールハウスの茶器の中にハーブの葉っぱが一枚入ってるのを見つけて、ああ小人は本当にいたんだ、と喜ぶシーンが、一番いいシーン。人間も小人も、距離のとり方を知らない人たちが、善意やら好奇心やらなにやらで互いにいらぬ手出しをして、平穏を壊していく。まあ、互いに分かり合う結末、というのは一応用意はされてるけど、解決ではないんですね。違う種族同士が互いに分かり合える、とか最初から最後まで誰も信じてないので、ドラマとしては盛り上がらない。全てがなるべくしてなる、という風に淡々と進行して、あっさり終わる。
なにより、千と千尋のハクみたいな病気の少年に魅力がないのが一番の問題かな。お手伝いの人は中の人のあて書きなのかな。ひとりだけ妙に表情が豊かだった。ヤな表情ばかりで、いい表情はしないんだけれども。
コナンのジムシーを思わせるスピラーは魅力的だけど、出番がほとんどない。スピラーと、あとびっくりした時のアリエッティの表情が、昔の宮崎アニメを彷彿させて懐かしい気がしました。