「シネマほらセット」橋本治/河出書房新社

ISBN:4309016189
キネマ旬報に連載された、架空の映画紹介コラムの単行本化。
ジャック・レモンマリリン・モンロービリー・ワイルダーが「一本刀土俵入り」を撮った「ギャングの花道」(TEACH ME DARLING, HOW TO DANCE )とか、山田洋次滝沢秀明いしだあゆみで「麗しのサブリナ」を翻案した「宇野小路家の夏ー麗しのタッキー」とか。キャスティングが趣味だという橋本治のマニアックな遊びが炸裂してます。同じ滝沢秀明でヘップバーンの翻案モノをやっても、中野裕之が「昼下がりの情事」を撮ると「TACKY IN LOVE」で相手役は岩下志摩で、それに三田佳子がからむとか。衣装は岩下志摩がゴルチエ滝沢秀明ヴィヴィアン・ウェストウッド三田佳子がダナ・キャランというとこまで設定されてます。ベット・ミドラーミヤコ蝶々なんて、いかにも見てみたい。
とにかく芸が細かくて、「ピーター・フォンダのサイコをシリーズ化してアメリカ版寅さんをやる」というネタだったら、「サイコ5 カンサスの二輪草」から「サイコ12 雨のピッツバーグ」まで八本、サブタイトルからキャストからいかにもなストーリーまで全部作ってしまう。で、配給はアルバトロスとか。
マンガネタでは、フェデリコ・フェリーニ鉄腕アトムとか、キャサリン・ヘップバーン月影千草をやるガラスの仮面とか。
飯島愛扮するプリンセス・テンホーが、北朝鮮を思わせる契丹民共和国(西契丹)で大暴れする「プリンセス・テンホー危機脱出」なんて、映画マニアネタ以外にもいろいろ楽しめます。シンデレラの娘が白雪姫、という「プリンセス・プリンセス」なんて、その設定だけでもいかにもドロドロです。最後はフランシス・コッポラの「七人の侍 episode2 野武士の復讐」。