攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

背景、力はいってるなあ。やけに鮮やかな色使いで、陰影を強調した画面とか、カヤの外におかれたトグサの独白で淡々と後日譚を語らせるとか、押井リスペクトなんだろうか。アッサリと元9課が揃って、筋書き通りっていうのも肩透かしではあるんだけれども、アクションの説得力で最後の決着をつけるアニメじゃないからなあ。
よくわからん箴言を引用しまくりの思弁的な会話が膨大な書籍を蔵する博物館の中でかわされるわけだけれど、二人は周囲に散乱している本ではなく、ネット上だかどこだかに蓄積されたデジタルデータを検索して引用しているはず。それぞれの引用元の文献は、多分あの広大な書庫のどこかにあるんだろうけど、もはや物理的な存在、モニュメントでしかない。情報の墓場、というより教養主義者の墓場といった感じ。
STAND ALONE COMPLEX−それぞれ孤立した複合体、というのは要するに「肉体を喪失しても、思考はネットを巡り、個を特定したままその存在は維持し続けられる」か如何という試練をいまだ経験しない自我、ということでしょうか。

少佐の最後の結論は「好奇心」だったけれど、マルドゥック・スクランブルには「好奇心は暴力」というテーゼがでてきたな。「知の饕餮(トウテツ)」は孔子暗黒伝だったか。好奇心とは、情報の自己組織化を欲望の根源とする概念だ。