石田衣良「波のうえの魔術師」

波のうえの魔術師

波のうえの魔術師

金融ミステリ、というより相場師小説。
安食堂のレジなんかに、よく透明なシリコンカバーがかかってることがあります。パソコンのキーボードカバーと同じやつです。すぐ汚れてしまうのかそもそも付け替えたりしないのか、たいがい手あかかヤニか油煙かすっかりしみ込んで色が変わってしまってたりします。そんな年期の入ったカバーをもってきてかぶせてしまったような小説です。キャラの造形からエピソードの展開から、とにかくこの手垢のまみれっぷりはただ事じゃないです。
主人公が初めて株取引をするときのドキドキを表現する文章は迫真の筆致です。ワイドショー見て銀行とか役人とかに腹を立てたりする人が溜飲を下げるのには使えるかもしれません。