ジョナサン・オージェ「夜の庭師」

夜の庭師 (創元推理文庫)

夜の庭師 (創元推理文庫)

親と生き別れて路頭に迷っていたモリーとキップの姉弟は、なんとか住み込みの働き口を見つけたが、そこは巨木に取り込まれた奇怪な屋敷だった。ウィンザー屋敷と呼ばれるその館は川の中の島に建ち、青白い顔の主人一家が住んでいた。さらに夜になると、屋敷の中を歩き回る不気味な男、「夜の庭師」がどこからともなく現れるのだった。1846年、ヴィクトリア朝のイギリスを舞台にしたゴーストストーリー。
年号が特定されているのは、背景にアイルランドの、ジャガイモ胴枯れ病による大飢饉が存在するため。そのためアイルランドではおよそ6年間で百万人が餓死し、また百万人がイングランド経由で新大陸に渡ったとされる。モリーとキップの姉弟も、イングランドに逃げてきた難民である。
発表は2014年と最近だが、抑えた描写がじわじわと雰囲気を盛り上げていく展開は伝統的な怪奇小説を思わせると同時に、良質な児童文学でもある。ディズニーが映画化する、と帯に書いてあった。