倉多江美「静粛に、天才只今勉強中!」

フランス革命からナポレオン時代、復古王政にかけて情報を武器にして立ち回り、生き残った政治家ジョゼフ・フーシェをモデルとしたジョゼフ・コティの半生記。ナントの物理教師が穏健共和派として議員となり、フランス革命の進展とともにジャコバン派に乗り換え、テルミドール9日のクーデターでは反ジャコバン派に回り、総裁政府が行き詰まると早々にナポレオンに肩入れする。変節漢と呼ばれ、秘密警察を情報収集能力の高さ故に敵味方双方から恐れられていたが、タレーランとともにナポレオン体制を支えた主要人物であった。
フーシェの、権力の中心へと常に向かいつつ権力に固執しない達観したような距離感が、倉多江美の乾いた画風にマッチして、フランス革命を題材にした歴史マンガの中でもユニークな作品となっている。同じくフランス革命を題材にした木原敏江「杖と翼」と読み比べるのも一興。
横山三国志みなもと太郎風雲児たち」、手塚治虫ブッダ」、諸星大二郎西遊妖猿伝」など歴史モノの名作を排出したコミックトムに連載され、潮出版でコミックスが出版されていたものの復刊である。
ちなみに、橋本治倉多江美論である「失われた水分を求めて」が氏の少女漫画評論の嚆矢となった。
静粛に、天才只今勉強中! 新装版 1

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