朝井まかて「御松茸騒動」

尾張藩士、19歳の榊原小四郎は有能な官吏であったが、周囲を見下すような傲慢さが疎まれ、御松茸同心に左遷される。島流しならぬ山流しである。尾張藩は上質の松茸が特産であったが、不作が続き、上納品や進物の入り用も御用商人からの調達でなんとか辻褄を合わせていた。
己の手腕ですぐにでも豊作にしてみせると意気込んではみたが、山のことも松茸のことも勝手がわからない。果たして小四郎は松茸の御林を蘇らせることができるのか。
山の中で自然相手に苦労する役人の話です。文庫本で300ページ弱、テンポよくサクサク読める。なんとも松茸が美味しそう。カブキ大名として有名な徳川宗春がいい役で出てます。卒母してはっちゃけるお母さんとか、面白いキャラなんだけど、本筋に絡まないんだよね。御山守の娘の千草がヒロインっぽいんだけど、あまり主人公と絡むエピソードがないし、話の膨らみの点では少し寂しい感じ。でも松茸のことは色々出て来るし、一気に読める軽いお仕事小説です。