なろう作家書き出し祭り!

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匿名で小説の冒頭部分だけを投稿し、誰が書き出しで読者を惹きつけられるのか。プロアマ合同のガチンコバトル。
第1会場31作の中に「本好きの下剋上」でこのラノ1位をとった香月美夜も参加してるというので見てきました。いくつか寸評。

  • 魔術師の弟子

とにかく一番面白かった。お祭り企画だし、ちょっと詰め込んでる感じもするけど、短い中でスピーディーに場面が転換して、話が動いて興味を引っ張る。適確な描写と最低限の説明でわかりやすく、かつ話の展開を邪魔しない。つか、他の作品が設定語り多過ぎなんだけど。
歴然と言うか格の違いと言うか。これが香月さんなのでは。ジャムのレシピとか出てくるし。

設定が一番ぶっ飛んでる。せっかく後先考えないで書ける企画なんだから、無茶な設定が色々出てくるのかと思ったんだけど、なんか想像がついちゃうパターンが多かった。でも、これは、この企画ならではという思い切った設定で、先が気になる魅力的な書き出し。ラノベ文体で、描き慣れた感じがするので、名のある書籍化作者なのでは。

  • 神姫舞踏のイヴィルベイン

小説を書き慣れてる感じがします。説明するところと、書かずに想像させるところのバランスが良いので、読みやすい。面白い、というより面白くなりそう、という見せ方がうまい。ある意味一番企画意図に沿ってるのかも。

  • 魔王の娘の婿探し

面白そう、ではある。意外な展開を盛り込んでるんだけれど、会話ばかりで描写が乏しいので、いまいち状況が分かりづらい。

  • 地獄犬《ヘルハウンド》ですが、かわいすぎて親に捨てられたので人間界で番犬アイドルやってます!

タイトルで全部説明してます。面白そうな設定だとは思うけれど、設定の説明しか書かれてなかった。

  • 秋の暮れの夢、陽魔のヨーマ

化物語、かな。書き出しというか、ワンエピソード分書いちゃってますよね。後を引くような奇妙な読後感がある。書きたいことを詰め込んで読みずらい恨みはあるけれど、もう少し読んで見たい気にさせる。

  • 森の中

読みやすくて分かりやすいのが良い。オチがついてまとまってるので、これ読んだだけで満足しちゃうという点では、企画からは外れてるかも。

  • 蘇生封じの銃弾術師

文章は描き慣れてる感じで、小説としても読みやすい。それなりに面白そうではあるけれど、前半と後半のつながりが不明。互いに無関係に見えたエピソードが次第に繋がっていくという構成の小説は勿論あるけれど、続きのない書き出しだけの企画でそれやられても、なんだか狐につままれたような気がしてしまう。限られた字数の大半を使って殺された人の出番はこれだけでもう出てこないんでしょ?

  • 神様と1500年修行したので最強です

いろいろと惜しい感じ。宿屋の看板娘だというメアリ視点の三人称小説なんだけど、引き締まった文体とラノベっぽい会話に違和感があるし、メアリの内心の冷静な描写と相まってシリアスなんだかコメディなんだか中途半端な印象。メアリのキャラもイメージがつかみづらい。タイトルで思い切りネタ振ってるんだけど、それを受けた内容になってない。最後に登場した戦士が神様と修行した最強の男なんだろうけれど、これだけでは何もわからない。なんだか曖昧な印象しか残らないので、続きも期待しづらい。

  • 先生、進捗どうですか

とりあえずクライマックスで、書き上げたばかりの原稿チラ見せしながら、読みたきゃ言うこと聞けって脅すのはナシの方向で。
第2会場

  • 魔王の侍女

なんかすごく「小説」になってる。必要最低限の説明で舞台や世界観のイメージは伝わるし、出てくるキャラもちゃんと立ってる。すごく面白そう。ホントに導入だけで、魔王も侍女も出てこないし、その意味ではどんな話になるのかまだわからないんだけど、作者を信頼して続きが読みたくなる。

  • 最強パーティーで雑用しているおっさんが、暇を出されたようです

ごめんなさい、タイトルの印象でナメてました。面白いです。文章も読みやすくて分かりやすいし、必要な情報をうまく混ぜ込んで伝えてる。主人公に興味が湧くし、続きが読みたくなる。

  • ヴァンパイア・クロニクル・オンライン

ヴァンパイヤとしてプレイできる未来のVRゲームの話。描写がうまいのでもう少し読みたい気にさせる。

  • その断崖に架け橋を 男装拳士エストの人助け放浪記

文章は読みやすいし、続きも気になる。ただし地味。冒頭で惹きつけるというわけではない。

  • 転生魔王のマニュアル無双

とりあえずアイデアは面白そう。

  • シュガーハート・ソルティパレット

文体を模索してる感じ。このテンションの文章を最後まで維持できるのなら、読んでみたい。

  • 水面の色

続きはかなり気になる。ただ展開が間延びしてて、限られた字数の中で余計なエピソードが多すぎる。例えば朝食風景とか要らないし。極端な話、最初と最後だけあればいい。主人公にしか見えない、名前のない色とか面白そうな導入だと思うんだけど。

  • 『雪中花』老舗妖怪旅館は廃れない

妖怪旅館モノってジャンルがあるのか。キャラ紹介だけだけれど、とりあえず楽しそうではある。

  • ゆえにえにしむすばれし

いい意味で、よく分からない。説明されない謎が興味を引いて、続きが読みたくなる。しっかりした文章は味わいがあり、自分の文体を持っている。

  • 孤独死したドラゴンに転生した俺は、パートナーを探し求める

文章は読みやすいとは言い難い。でも、なんか雰囲気がカワイイ。
第3会場

  • 女王陛下と眠り猫

面白かった。文章も読みやすいし、必要最低限の説明で続きを読みたい気にさせる。19世紀末か20世紀初頭のイギリスあたりをイメージした科学と魔法の入り混じった世界で、スパイものというのはとりあえずジャンル設定だけでも期待を持たせる。

  • 実況ちゃんだって闘いたい!

テンポのよい、読みやすい文章で、うまく必要な情報を伝えて興味を引く。面白そう。

  • 遺跡潜りと荒廃世界の旧式人形《ロストオートマタ》

スチームパンクっぽい冒険ファンタジーになるのかな。設定は面白そうではあるんだけれど。描写のイメージ喚起力に物足りなさを感じる。

  • そして、私は炎に焼かれる

読みやすい文章に読まされたけれど、ここから面白くなるのか?

  • 雨の降る町

魅力的な一枚絵に付けた長めのキャプション、という感じ。どんな話になるのか、とっかかりくらいはないと次を読みたいという気にならない。

  • 美しい人はみんな死んでる

途中までは冗長だけど、最後でぐいっと掴まれた。

  • 狂喜に笑みを

とりあえず殺陣の描写は3会場通しても1番なのではないか。

  • Sforzando

部活青春ものの中では一番落ち着いて読めそう。時数の限られた「書き出し」部分で延々とワイルドの「サロメ」を説明してるのはどうかと思うけど。