石川博品「あたらしいうつくしいことば」

AMAZONで買って気がついたら同人誌だった。表題作は聾学校で女子高を舞台にした百合小説エス文学とか、そんな感じ。「小説家になろう」でも読めます。http://ncode.syosetu.com/n7108ea/ ラノベというよりジュブナイルですね。ラノベ文体が苦手な人にもお勧めできます。手話をここまで魅力的に描いた作品を私は知りません。
登場する2種類の手話、国語手話と日本語同期手話と統合手話というのは架空のもので、実際に使われてるのは日本手話と日本語対応手話だそうで、どこまでがフィクションなのかわからないところはあるけれど、手話の種類が違うと互いにカタコトの日本語を話してる感じになって話が通じにくいとか、仲間内だけの独自の手話が作られていくところとか、読んでいて説得力があるし、想像力をかきたてられる。タイトルの「あたらしいうつくしいことば」とは、一義的には仲間内で作られる新しい手話を指すのだけれど、手話とは両手だけではなく顔の動きや表情なども含めて表現されるもので、その様子の流麗な様、あるいは集団の手指が一斉にひらひらと静かにお喋りする様子を表現してもいる。
主人公の紗雪が通う聾学校に、経営破綻したお嬢様学校から二人の転入生がやってくるところから話は始まるが、朝の教室の様子を描いた冒頭部分、手話による女子高生たちのお喋りのシーンが見事である。

AMAZONで買った同人誌にはもう1本、室町時代の禅僧が中世ヨーロッパ風異世界に転生して冒険するファンタジーも入ってました。現代人じゃなくて中世の日本人が転生するのは珍しいと思ったけど、まあ同時代人だからか馴染むのも早いというくらいで、むしろ作風の古さが気になった。