城平京「雨の日も神様と相撲を」

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)

  • 作者:城平 京
  • 発売日: 2016/01/19
  • メディア: 文庫
「虚構推理」の城平京が書いた、ミステリというか相撲小説というか。相撲をとるカエル、を考察してみたらこうなった、というか。
両親を交通事故で一度に失った少年、逢沢文季は叔父に引き取られ、山間の久々留木村にやってきた。文季は両親から相撲の英才教育を受けた相撲少年であったが、身長も150センチ以下、体重も40キロ以下という体格のため試合などでもほとんど実績を残せていない。文季本人も、早くから自分の限界を自覚し、相撲とは無縁の生活をおくりたいと思っていた。しかし、彼がこれから住む久々留木村は、村を挙げて相撲に取り組んでいる特殊な村だった。それというのも村の守神がカエルで、カエルは相撲が好きだから、という理由である。実際に村は災害にもあわず米は毎年豊作で作柄もよく、特に祭礼の奉納相撲で優勝した農家の米は最高級品質になるというのだから、村の人たちは誰もカエル様のご利益を疑わず、相撲の稽古に励んでいた。村の中学に編入した文季は相撲とは距離を取ろうとしていたが、体格で劣り力に頼れない分、戦術を追求していたことから理論派として一目置かれるようになり、アドバイザーとして村の相撲に巻き込まれていく。そんな折、村人と神様を仲立ちする「かんなぎ」の遠泉家長女、同じ中学で1年下の真夏から呼び出しを受ける。真夏はの文季への頼みごとは、カエルの神様の相撲コーチをしてくれというのだった。
これだけでは妙な相撲ファンジーでミステリでは無いように思われるが、謎がありロジカルな解決が示される、ミステリである。カエル相撲と並行して、村の近傍で殺人事件が起きたり、文季が推理したりもするのでその辺もミステリ要素ではあるが、あくまで脇筋にとどまる。カエル相撲こそが本筋であり、謎である。事実と説明のレイヤーが積み重なってるところが、城平京っぽい。