それまでも、同じキャットフードを続けているうちに食べ飽きてしまうことはままあった。そんなときはいくつか種類を買ってきて、美夜が気に入るものを選べばよかった。でも、腎臓用療法食は選択の余地がない。チキンとフィッシュがあったが、どちらも口をつけずにみるみる痩せていった。
ネットで近くの動物病院を検索して、M病院に行ってみることにした。車で10分ほどのところにある、新しい病院だった。痩せた女の先生が診てくれた。
美夜は人懐こく、初めての病院でもあまり怯えたりしない。落ち着いてみや、みや、と啼いている。ただ、車には弱く、すぐ吐いたりしてしまうのだった。それでもこのときは、胃の中もからっぽで、吐くものもなかった。体重は2キロちょっとだった。
血液検査で、腎臓病が進行していることがわかった。もってあと半年ではないか、と先生は言った。実際はその後3年近く生きたのだけれど、そのときはかなり崖っぷちに立っていたのだ。
注射などしてもらい、強制給餌のやり方を教わる。腎臓病が原因で気持ちが悪くなって食欲がなくなり、その結果腎臓病が悪化するという悪循環に陥っているので、当面の課題はご飯を食べさせること。そこで、ウェットフードを大きめの注射器のポンプに詰めて、美夜の口の中に直接いれてやる。美夜はポンプの先を口の中に突っ込まれるのは嫌がって前脚で払いのけようとするのだが、口の中に入ったご飯は喜んで食べていた。