元気が戻ってきてからも、月2回くらいのペースで病院に通って、検査を受けたり薬をもらったりしていた。検査の数値が悪化してきて投薬だけでは足りなくなると、点滴が必要だと先生は言った。
腎臓の機能が追いつかなくなると、人間なら透析をすることになる。でも、透析というのは、腕に針を刺して何時間も静かに横になっていなければならない。ネコには無理だ。どうしてもやるなら、全身麻酔で眠らせておく必要がある。勿論身体には負担になるし、年齢を考えると危険ですらある。そこで透析の代わりに点滴をするのである。
点滴もやはり腕に針を刺したまま時間をかけて流し込むんだから同じではないか、と思うかもしれない、しかしネコの点滴は違う。圧力をかけて点滴の溶液を一気に流し込むのだ。うまくしたもので、ネコの皮膚は下の筋肉と離れており、隙間があいている。ネコの皮膚をつまんで引っ張るとぐにゅりと伸びるのは、そのせいでもある。その隙間に、水をためておけば、あとはゆっくり吸収されていくということになる。
50cc入る、大きめの注射器にまず点滴の液を入れ、次に細いビニールの管の先に注射針がついている「翼状針」に針を付け替えると、背中の皮膚をつまんでその針を突き刺し、「点滴」する。かなり力を入れないと溶液が入っていかないし、刺しどころで出血したりもして、これもやはり慣れが必要だ。