海街diary

吉田秋生の同名のマンガの映画化。原作を大幅改変してるけど、原作にとても忠実だという、不思議な映画。こういう映画化もあるんだ、と気づかせてもらいました。
これは鎌倉の古い家に住んでいる三姉妹が、失踪して亡くなった父親の残した腹違いの妹を引き取ることから始まるお話です。原作は、引き取られた妹のすずが主人公で、すずが属するサッカーチームの話が全体の半分くらいを占めるんですが、映画ではそれがほとんどカットされています。映画の主人公は長女の幸で、幸とすず、幸とすずと父親、幸と母親、といったエピソードを再構成して、幸と家族の物語に仕上げています。原作のメインプロットをほとんどカットするという大胆な改変をしていますが、使われているエピソードはほとんど原作通りで、脇役を使ったスピンアウトということではありません。敢えて言うなら、再編集版でしょうか。登場人物一人の絡むエピソードに絞って取り出して構成し直しても、しっかり「海街diary」になっているのは、原作の持つ強靭さというべきでしょう。まあ原作自身、同作者の「ラヴァーズ・キス」から派生したとも言えますし、これもアリなのかと思いました。多数の登場人物をそれぞれ描いていく群像劇の要素をもっている原作をダイジェストするよりは、原作のもつ空気を巧みに映像化して、作品として成立させる上手いやり方でしょう。
しかし葬式と食事のシーンが多い映画でした。考えてみれば長女は看護師、次女は金融機関で、仕事は生き死にの話にカネの話、おまけに不倫だなさぬ仲だと、どうしたってドロドロした重い話になりそうな設定です。それを、キレイな風景の中で、淡々と描く。よい日本映画だと思います。原作はこちら。なお、梅酒の話は2巻、お箸と花火は3巻、海猫食堂は5巻です。細かい描写は全巻に渡って該当箇所が分布しています。

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
海街diary(うみまちダイアリー)2 真昼の月(フラワーコミックス)
海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)
海街diary 4 帰れない ふたり(flowers コミックス)
海街diary 5 群青 (flowers コミックス)