井上達夫小林よしのり「ザ・議論」

ガチのリベラリスト井上達夫小林よしのり天皇制、歴史認識憲法について語り合う対談集。それぞれの思想的骨格がわかりやすく出てるので、読んでてちゃんと面白い。
井上達夫は「リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください」の人ですね。小林よしのりは、薬害エイズ市民運動を支援した後にプロ市民を批判し、「戦争論」でサヨクの欺瞞を追求しつつ反米保守にもケンカを売るという、喧嘩上等な人です。天皇が大好きな個人主義者、でしょうか。思想のコアの部分が自身の経験に培われた主観で、天皇という人格を信頼して抽象的な概念に不信感を持つというのは、普遍性を希求するリベラリズムとはやっぱり違うと思う。むしろ思想的立場でいうなら、ローカリズムかな。党派的な言動を嫌う人だから、井上達夫と相性は合ってて、議論してると論点が明確になって良い。
小林よしのり論って、議論の中身の話ばかりで、絵の話ってないよね。マンガ家なんだし、何よりゴーマニズム宣言の前と後であれだけ絵柄がガラッと変わってるんだから、表現論みたいなのがあっていいと思うんだけど。昔の丸っこい絵では保たなくて、内容に合わせて写実性を上げてったのかもしれないけど、薬害エイズの安倍英の顔をいやらしく描きたかったからかもしれないし。

でもやっぱ原理主義って日本に馴染まないと思うの。原理原則をブレずに保持して斬りまくってくのは明快なんだけど、現実としては節操が無かろうともプラグマティックになった方がいいと思っちゃうの。普遍主義的リベラリズムは、権威と権力を一元化させるイスラム教の普遍主義とどう対峙するのかってのは興味あるけど。
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