獅子文六「悦ちゃん」

悦ちゃん (ちくま文庫)

悦ちゃん (ちくま文庫)

悦ちゃんは父親と二人暮らししてる10歳の女の子。父親に再婚話が持ち上がるんだけど、その相手がヤな女で、なのに父親の方は振り回されて喜んでる。そこで悦ちゃんが、自分の大好きなお姉さんにママになってもらおうと大活躍する。昭和11年(1936年)の新聞小説だけど、なんか一周回って新しい。その後テンプレ化して消費されていく、おませな子供が親を助ける人情モノコメディの元ネタ、いわばオリジナルの一つなんだと思う。都市化した東京の風俗、世相を反映した新しい読み物として書き上げ、その筋立ての面白さが時代を超え形を変えて、例えば「じゃりン子チエ」とかに受け継がれていってたりする。その源流ということで、今読んだって全然遜色なく面白い。
最近また遠藤周作とか三島由紀夫とか、面白いのを選りすぐって復刊してるね。獅子文六とか源氏鶏太とか、ちょっと昔の流行作家の本ってなかなか読む機会がなかったりするけど、実はホントに「面白い小説」だからこういう時に読むのがいいと思う。