萩尾望都「王妃マルゴ」

王妃マルゴ 5 (愛蔵版コミックス)

王妃マルゴ 5 (愛蔵版コミックス)

カトリックユグノー(新教徒)が対立する16世紀フランスを舞台にした歴史劇。500年前にはキリスト教徒同士が殺し合いしてたんですよね。5巻はついにサン・バルテルミの虐殺(聖バーソロミューの虐殺)です。欲望と不信、狂気と恐怖が渦巻く虐殺を萩尾望都の美麗な筆が美しくも残酷な絵画に仕立てます。
キャラクターはみんななんだかエキセントリックだけれど、500年も昔の外国の貴族だからね。敢えて現代の読者に引きつけて描くようなことはせずに、全体としてオペラか舞台劇のような、歴史そのものを額縁に入れたような表現に仕上げようとしているのではないか。様式に当てはめるのではなくて、新しい様式美を作り出そうとしているような。
ラスボスというか、影で絶大な権力を振るう王母カトリーヌ・ド・メディチの顔が結構フツーのおばさんなんで、最初読むと油断します。こういうキャラはもっとおっかなそうに描くよね、普通。可愛かったマルゴはいつのまにか毒婦になってるし、憧れのヒーローはヒステリックな殺人鬼になってるし、油断してるとビックリしますよ。