谷口ジロー「猟犬探偵」

猟犬探偵 1 セント・メリーのリボン (愛蔵版コミックス)

猟犬探偵 1 セント・メリーのリボン (愛蔵版コミックス)

猟犬探偵 2 サイド・キック (愛蔵版コミックス)

猟犬探偵 2 サイド・キック (愛蔵版コミックス)

思いがけない訃報に接し、突然のことに驚くばかりです。享年69。
代表作というと「孤独のグルメ」になるんでしょうか。「事件屋稼業」「坊ちゃんの時代」と関川夏生とのコンビで産んだ作品の印象が強かったのですが、夢枕獏など様々な作家の原作をマンガ化したり、「歩く人」「犬を飼う」などのオリジナルも描いたり、と幅広い創作活動を続けてきた作家です。
谷口ジローの描く人物は格闘家でも登山家でも、寡黙で常に自分自身と対峙しているような人物が多く、一方で動物、特に犬を描いた作品も数多く描いています。人でも犬でも、筋肉の動きが存在感になっているような絵でした。
「猟犬探偵」は稲見一良小説をマンガ化したものです。主人公の龍門卓はいなくなった猟犬を探す、猟犬専門の探偵。山の中で相棒の猟犬とともに暮らしている。猟犬探しの依頼がそうあるわけでもなく、やむなく大型犬を探したり物騒な男たちに絡まれたりもしている。龍門は他の谷口マンガの主人公同様に孤独を糧とする寡黙な男で、自分で決めたルールに従って生きている。そして、捜査の過程で、やはりそんな頑固で一徹な老人と出会う。作者自らあとがきで「ハードボイルドファンタジー」と呼んでいるように、ハードボイルドな世界観で成立させた人情劇。