落合楼村上


伊豆の天城湯ヶ島温泉に行った。「伊豆の踊り子」の舞台となった名湯で、その中でも泊まれる文化財と言われる落合楼に投宿した。創業は明治7年で、今残っている建物は昭和8年〜12年に贅を尽くした和風モダン。もともと村上楼だったのが、猫越川と本谷川が合流して狩野川となる合流点に建っていることから落合楼の名を幕末三舟の一人から戴いたと云う。無名時代の川端康成が通いつめて、伊豆の踊り子の推敲もここでやったとか、逸話も事欠かない。京都から宮大工を呼んで釘を使わずに建てたとか、釣り天井で柱のない大広間を2階に作ったとか、色々職人芸が凝らされているので、朝の館内ツアーに参加して見て回ると面白い。障子の組子細工や欄間もいちいち凝ってる。1階から2階の大広間まで貫いてる2本の床柱は紫檀だし、天井板は屋久杉だし、まあ今では到底建てられないね。ガラスも微妙に歪みのある手造りで、日本ではもう作れる職人さんがいないとか。割れたらドイツから取り寄せるんだそうだ。障子紙も特注の1枚紙で、やっぱり作れる職人さんがいなくなってるらしいけど、張替えとかどうしてるんだろう。

石灯籠なんだけど、ちょうどガラスに映ったラウンジの照明が燈篭の灯のように見える。石の積み方がこの角度以外だとバランス悪くて、なんだか無造作に積み上げたようにしか見えない。ぴったりの角度で見た時だけ、燈篭に見えるという仕掛け。


宿泊プランは旅館タイプと山荘タイプとあって、空いてたのが山荘タイプの方だったのでそっちを選んだ。次の間つきの広い客室で、数寄屋造。部屋ごとに違う職人がそれぞれ腕を競ったということで、同じ部屋はないそうだ。食事は山荘レストランで食べる。地元食材の会席で、美味しい。伊豆って海のものも山のものもあるからお得だと思う。新鮮な山葵とか、おろしながら食べられます。

温泉は天狗湯とモダン風呂とあって、昼間から夕方までは天狗湯が男湯、夜から翌朝はモダン風呂が男湯になる。天狗湯は洞窟から露天風呂に続いてるちょっと不思議な温泉で、絶対入るべきなんだけど、確か20時だったと思ったけど、男湯と女湯が切り替わっちゃうので、注意すべし。楽天トラベルのコメントとか見ると、洗い場が狭いとか書いてあって、確かにまあ広くはない。露天風呂は広いんだけど、洞窟の中は狭い感じで、私が入った時は人もいなくて気にならなかったけど混んでたら気になるかもしれない。でも、洞窟の温泉だよ?
他に40分無料の貸切露天風呂もあって、これが結構広くて気持ちいいので、こっちもおすすめ。
敷地内には吊り橋もある。渡った先にはちょっとした休憩所があって、ぼおっと川を眺めていられる。川には実は自家発電設備があって、これは壊れてたのを東京電力が整備して使えるようにしたのだとか。本館の方にも、皮を見下ろすラウンジがあって、そっちも風情がある。サイトの説明とか見てもどこにも書いてませんが、館内はWi-Fiあり。宿泊客にはパスワード教えてくれる。
http://www.ochiairo.co.jp