村上もとか「フイチン再見!」

戦前にデビューし、長谷川町子と並び日本の少女漫画黎明期に活躍した巨星上田としこの一代記。全10巻。
鉄腕アトムのアニメ放送開始から始まる最終巻では、日本のマンガが質量ともに大きく発展していく中で、上田としこは次第に「1ダースの会」(女性漫画家の親睦会)結成を呼びかけ、後進の育成に関わり、日本漫画家協会理事として業界の発展に尽くすなど表舞台からは引いていく。
手塚治虫赤塚不二夫をはじめ、ちばてつや望月あきら水野英子と、顔が広いというか面倒見がいいというか、大先輩としてあれこれ相談相手になるわけです。何しろ手塚治虫より11歳年上なんだし。そして手塚治虫石森章太郎長谷川町子よりも長生きして、最後まで現役のまま2008年3月7日90歳で亡くなったところで物語も幕を降ろす。
あとがきで作者の村上もとかは、上田としこは生活者としての感覚を大事にしていたと書いている。本作も大正から昭和、平成まで日本の近現代史を通じて活躍した一人の女性を描いて、生活感を感じさせる。だからこそ日本の漫画史マンガとしても近現代史マンガとしても、必読書となった。
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