宇宙よりも遠い場所 #12 宇宙よりも遠い場所

いよいよ雪上車で内陸へと向かう。報瀬はな曲に来ることで、母親の帰りを待っている日常を変えようとしていたのだけれど、南極に来ても何も変わっていない自分に不安になる。母の死んだ地点まで行って、それでも何も変わらなかったら、もう自分は変われないのではないか。
しかし、建設途中の天体観測所で見つけた母親のノートパソコンを起動し、自分が出したメールを次々と受信し始めるのを見たとき、報瀬の感情が堰を切って溢れ出す。
未読メールのカウントがこんなに切ないものだとは思わなかった。コニー・ウィリス「航路」に、死とはメッセージが届かなくなることだ、というのがあったのを思い出した。
母の訃報が届いた日の報瀬の階層から始まり、彼女の心情をトレースするかのように観測隊の日常と回想が交錯する。荷物運びや設営などの労働と、延々と待機が続く移動時間。一面ただ白い嵐が吹き荒れるブリザード南極大陸の内陸という、死と隣り合わせの想像を絶する環境を細かな描写の積み重ねで描くことで、生命を拒絶する極寒の地の畏怖すべき魅力が説得力をもって示される。
貴子が行方不明になった後の最後の交信で「きれい」と言った時、何を見ていたのか、何を考えていたのかはもはや分からない。でも、南極を綺麗だと言い残したと信じて、吟はその遺志を継ぐ。そして報瀬は、母の死に直面する。
サブタイがこれだし、てっきり最終回だと思ったけれど、まだあと1回あるのね。