のの原兎太・溝口ぐる「生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい」

エンダルジア王国は魔物が魔の森から溢れ出す「スタンピード」によって滅亡し、跡には巨大な迷宮が残された。錬金術師マリエラは仮死の魔法陣によってスタンピードを生き残ったが、ちょっとした間違いがあり、起きたのは200年後だった。200年の間に王国の都市は廃墟となり、迷宮討伐の拠点となる迷宮都市が迷宮の周囲を囲んでいた。そしてマリエラは迷宮都市唯一の錬金術師となっていた。
錬金術師は土地の地脈と契約することで、地脈から命の雫を引き出すことができる。魔物の土地となってしまった迷宮都市では新たに地脈との契約ができず、そして錬金術師が命の雫を使わなければポーションは作れない。そして使った命の雫と同じ地脈の土地でなければポーションは役に立たない。迷宮都市では、過去の錬金術師たちが作ったポーションの在庫が高額で取引されていた。マリエラは自身の安全のために錬金術師であることを隠しつつ、なんとかポーションの捌き方を考えて、穏やかに暮らそうとするのだけれど。
錬金術以外はいろいろ残念なヒロインのスローライフファンタジー、だけど迷宮討伐隊の迷宮攻略は熱いバトルで盛り上がったりもするし、後半は結構派手になる。スローライフどこいったという感じだけれど、ちゃんと最後は戻るので安心して下さい。書籍版は全6巻で完結していて、手頃な長さ。
架空の材料で作る架空のポーションのレシピとか、架空の材料で作る架空の料理とか、細かく描写して面白く読ませるのはすごい。原作は文章もしっかりしていて読みやすい。スローライフ系で、全体を構成してしっかりヤマ場を盛り上げて完結させてるのは実は貴重かもしれない。
ノリは割と少年マンガで、バトルの合間にもこまめにギャグが入る。男性キャラの平均年齢が高くて、女性キャラの平均年齢が低い気がするけど、ヒロインの周りをイイ男で固めてるなあ。原作小説は「小説家になろう」でも読めます。