森見登美彦「きつねのはなし」

きつねのはなし (新潮文庫)

きつねのはなし (新潮文庫)

和風のファンタジーから怪談に向かいました。いつもの通り道からふと曲がった路地で迷ってしまったような曖昧で不気味な話が、濃密な気配とともに語られます。それぞれが微妙に重なり合う四本の短編が収められていますが、その重なり具合がさらに風景の陰影を濃くしていて、何度も繰り返し味わいたくなります。森見登美彦の崩しても品のある日本語がおいしいお茶によく合うので、藷蕷饅頭など用意して本書を手にするのもよいでしょう。
とりあえず京都に行って、夜の叡山電車とか乗ってみたくなった。