柿村将彦「隣のずこずこ」

隣のずこずこ

隣のずこずこ

  • 作者:柿村 将彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/03/22
  • メディア: 単行本
日本ファンタジーノベル大賞2017受賞作。「衝撃のゆるふわダークファンタジー」というわけのわからないキャッチコピーがついてますが、確かに他に形容のしようが無い、「ゆるふわ」と「ダーク」が両立した大傑作です。舞城王太郎っぽい疾走感とか、ティプトリーJrっぽい切なさとか、あと小野不由美の「屍鬼」とか、いろいろ連想しますけど、あまり経験のない読み味です。敢えて言えば終末小説かなあ。中学の生徒が全校で10人しかいないような日本の片田舎に、或る日突然信楽焼のタヌキがやってきます。語り手である女子中学生が友達に誘われて、旅館に逗留してるタヌキを見に行く導入から、一気に引き込まれます。とりあえず読むべき。
ファンタジーノベル大賞は酒見賢一をはじめ佐藤亜紀森見登美彦などあまたの才能を輩出したのち、4年間の休止期間を経て、新潮社が後援から主催となって新たなスタートを切ったわけですが、その再開第1作として受賞したのが、1989年に第一回大賞を受賞した酒見賢一後宮小説」に匹敵する衝撃作となったわけです。やはりファンタジー大賞と本屋大賞は侮れない。