渡辺優「ラメルノエリキサ」

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

ラメルノエリキサ (集英社文庫)

語り手は小峰りな、女子高生。「やられたら、絶対やり返す」が信条。物語は、りなが夜道で突然刺されるところから始まる。りなは絶対復讐してやると犯人探しに乗り出すが、手がかりは犯人が残した謎の言葉「ラメルノエリキサ」のみ。ミステリ、というよりは青春小説で、タフなリアリストの主人公の不謹慎な活躍に夢中になって一気読みした。キレの或る文体も魅力。
りなのお姉ちゃんは、妹の復讐主義を矯正することは諦めて、「やり過ぎはいけない」と諭す。飼い猫の足を折られた仕返しは、せいぜい相手の腕を折るくらいに留めるべきで、殺してはいけない、と言う姉は、妹がいつか相手殺すのではないかと心配している。りなのママは誰よりも美しく、誰よりも優しい、慈悲深い完璧なママ。りなはそんなママが大好きだけど、ママを裏切ることも大好き。見事にわがままなエゴイストばかりが出てくるのだけれど、スピーディな展開とユーモラスな語り口もあって、いっそ清々しい。岡崎京子とか好きな人にはオススメ。りなのお姉ちゃんのキャラも抜群で、最後まで読めば絶対ファンになる。