- 作者:佐藤 多佳子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/08/28
- メディア: 文庫
題名だけだと、なんかヒューマンな感動モノかと思うけど、そういうのとは違う。職人芸としてのスリを愛する男の物語で、堅気の話じゃあない。ジャンルでいえばピカレスクかなあ。白浪物という方がしっくりくるか。博打好きの占い師との奇妙なコンビが、少年スリ団と対決するという、なんか昭和30年代みたいな小説。舞台も風俗も現代なんだけどね。文章は調子がいいし、とにかくよく動くスリの主人公を追っかけて話の展開も早いし、けっこう長い小説なんだけど飽きさせずに最後まで引っ張っていく。博打好きの占い師は、もっとだらしなくっていいと思ったんだけれども、モラトリアムのお坊ちゃんなんだよね。そのあたりで、旧きよきジュブナイルの香りを漂わせている気がする