いばらの王-King of Thorn-

見てきた。水曜はサービスデーで1,000円だった。面白かったよ。一応ネタバレあり
原作は知らなかったけれど、難解との前評判を聞いてちょっと身構えて行った。前の回の観客が出てきて、一生懸命「あれはカスミが……」「そのときシズクが……」と答え合わせしたりしてたし。たしかに、込み入った設定で、ミスリードの仕掛けもたっぷりあって、そういう意味ではめんどくさい映画ではある。でも、充分練り込まれた構成で、そのめんどくさい仕掛けをキチンとわかりやすく見せていた。一応公式サイトでも、キーワードを打ち込めばネタばれ解説が読めるけど。ちなみに、キーワードは映画を見てればわかるけど、忘れちゃうかもと心配ならばパンフを買うのが吉。(以下ネタばれ)
作画は気合い入ってた。襲ってくるモンスターは演出もホラーだし、CGの動きを活かしつつ手描きとうまく融合させていた。爆発シーンは意外に少なくて、床が崩れたり溺れかけたりなかなかハードな肉体系アクションがしっかり身体感覚を伝えていた。木材にはさまれるシズクとかすげー痛そう。ガンアクションも凝ってるし、見所は多い。いきなり引き込まれるツカミから、希望があるんだかないんだかなラストまで、ちゃんと狙い通り面白いB級アクション映画になってたと思う。
多分原作だと、登場キャラそれぞれのバックグラウンドとかいろいろかき込まれてたんだろうなあ。そのへんサラリとにおわせるだけにして、シズクとカスミの姉妹の物語に絞って大胆に再構成した、という感じがする。まあ説明してないことも多いけれど、1本の映画として成立させていた。
アリス=カスミの意図が、そのままハリウッド流の定番なキャラ配置になってるという仕掛けは面白いね。ただシズクが実はカスミの作ったオルタナティブってことは、あれはカスミにとっての理想であって現実のシズクはもっとうじうじしてメンドくさい女だったんじゃないのか。中身はけっこうカスミで、現実のシズクとは別キャラだったんじゃないのか。そう考えると、結局カスミがシズクとして冒険することで家族の死を乗り越えて生まれ変わる物語、と見ることはできる。
見ててよくわからなかったシーンは、後半酒蔵から隠し階段を上ってく途中で、最後尾にいた元警官のロンが分岐点ではぐれそうになるところ。ロンが迷ったような素振りをしたあと、俯瞰のカメラがぐるりと回る。その後のカットでは何事もなかったかのようにロンが一行の後についてたので、実はロンがはぐれてしまっていて、一行の中のロンはなにか別のモノにすりかわってるとかの伏線かと思ったけれど、結局そのままなにもなかった。後から考えれば、メデューサ発症を意味するカットだったみたいだけど、あれは異様なカットだった。もし発症シーンだったのなら主観映像で視界がぼやけるとか、なんかそういうのの方がよかったのでは。
しかし、モンスターの設定はアリスがティムから学習したのかと思ったら、公式設定ではカスミの暴走した妄想だそうです。高校女子の妄想がダンジョンのモンスターって、どんだけゲーム好きなんだカスミ。