冲方丁「微睡みのセフィロト」

微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)

微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)

冲方丁の原点、ということで、実際に本人が解説でその原点っぷりを紹介していたりする。
第四次元感応者との存亡を賭けた世界戦争が終わった17年後、戦争で妻と娘を失った主人公が、戦争を引き起こした「女王」の娘とコンビを組んで、再び世界戦争を引き起こそうとする感応者の犯罪と戦う。文庫本で200ページちょっとの中に、冲方丁のエッセンスが濃縮されている。端整でスッキリ切り詰められた文体と、派手なアクションの組み合わせが気持ちよい。短い話の中で、チート級の能力者同士の死闘が繰り広げられるので、展開はかなり早い。なんだかよくわからない超能力で非常識なバトルをするわけで、下手に説明しだすとかえって混乱したり、なにが起こってるのかわからなくなってしまうものだが、余分な説明のない禁欲的な描写で的確に表現して、無闇矢鱈とカッコいい。