- 作者: 待鳥聡史
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/03/29
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アメリカは二大政党制、というのが定説で、それはその通りなんだけど、アメリカの政党は分権的性格が強く、日本の政党とはイメージが違う。「党首」もいないし、議員一人ひとりが自分のブレーンとなるチームを率いて独自に活動している側面が強く、党議拘束とかもないから議案ごとに党派を超えた多数派形成を行う「クロスボーティング」がしばしば行われる。共和党と民主党の二大政党にまとまってるのは選挙制度上その方が有利だということで、それぞれの政党の性格は時代ごとに結構違っている。今では民主党はリベラルだけど、南北戦争前は奴隷制維持を主張した南部の農園主の政党だったわけだし。民主党の変化はルーズベルトのニューディール政策に始まる。世界恐慌に際してケインズ的な積極財政政策を採用し、その受益者となった都市部の労働者階級で支持者を獲得したことで、より労働者の利害を反映した政策を採るようになっていった。ただそうなると、従来からの民主党支持者だった南部白人層は取り残されていくわけで、それを取り込もうとした共和党が伝統的価値観を軸に据えた選挙戦略を採るようになった。こうしてリベラルの民主党と保守の共和党、という性格ができてくるわけだけれど、対立軸に価値観を持ち出してきたことで、連邦議員の性格がこれまでの「地域的な利害の代表」から保守やリベラルといった「イデオロギーの代表」になっていった。
一方、連邦議会には、各利害代表がそれぞれの利益を守ろうとする「代表」としての側面と、利害を調停して連邦政府を運営する「統治」の側面がある。特に多数党は個別の利害ばかり言ってられないわけで、議会の円滑な運営を図らないといけない。実際にクリントン政権下やブッシュ政権下で連邦予算が議会を通らず、政府機能が停止するということもあったわけで、そうなると結局世論の強い非難を浴びてしまう。そこで「統治」の側面から妥協すると、支持者の不満がポピュリズムを誘発する。アメリカ政治にはそういう力学が働いてるらしい。
- 作者: 冷泉彰彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
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