有吉佐和子「処女連禱」

処女連祷 (集英社文庫)

処女連祷 (集英社文庫)

昭和のガールズトーク小説有吉佐和子というと「複合汚染」「恍惚の人」と社会派イメージが強いかもしれないけれど、基本的にストーリーテラーで、お話が面白いせいで二流扱いされてたようなとこがあった気がする。本作は1957年の著者初の長編小説有吉佐和子小説って女同士の愛憎とか相克とか腐れ縁とか、複雑な関係性を描くのが巧みで、これはいわばその原点とも言える。「見えない悪意」というか、普通に女の子同士が噂話し合ってるだけのようでいて、だんだんおかしくなっていく。
七人の女子大生仲良しグループの卒業後、30代くらいまでのそれぞれの人生が描かれている。戦後間もない頃、まだ女子大生が少数のエリートだった時代、「処女性」が誇りであった時代ということでタイトルも大時代ではあるけれど、今読んでも古びてないのは女性の屈託の仕方って変わってないからか。
卒業後は教師になった語り手の文代は地味目な優等生で、何人かの男性とお付き合いするんだけれど、地味目な恋愛が不満で続かない。一方で学究肌で一種豪快でもあった朋枝はグループ内で唯一人、早々に結婚して家事育児に追われてオバサン化する。編集者になった行動派のトモ子が独身主義を標榜すれば、外資系商社の秘書になった珠美は妙な不倫の告白を始める。そして、名家の御曹司である婚約者との波乱万丈なラブロマンスを惚気たり愚痴ったりしている祐子に、彼女たちはそれぞれ振り回され続ける。その他女子大時代の恩師や異様な老嬢、学士芸者など主要キャラがほぼ独身女性で、男性不在のまま結婚や恋愛を中心に話は進んでいく中で、裕子の存在が次第に不気味になっていく。
今だともっとホラーにしちゃうんだろうな。でも日常の範囲内で留めているからこそ、半世紀以上たってもリアリティを保っている。