橋本治「お春」
- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2019/08/22
- メディア: 文庫
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確かに登場人物はそれぞれに愚かである。愚かゆえに不幸であるとか、愚かゆえに幸福であるとかいうことは無い。徳目としての愚かさである。ただ美貌の若侍は、何も無い空洞なので「愚かさ」も持ち合わせていない。
江戸時代で、お嬢さんだから着物の描写がふんだんに出てくる。時代小説でファッション描写というと有吉佐和子を思い出すけれど、橋本治も負けてません。着物の色目や模様の細かい描写が情景描写だけでなく心理の綾を描き出す。