ゆうきまさみ「白暮のクロニクル」

吸血鬼が探偵役のミステリ漫画。完結編です。
「息長」(オキナガ)と呼ばれる不老不死の種族がずっと普通の人間に混じって社会生活している、という設定の現代日本が舞台。主人公伏木あかりは、オキナガを管轄する厚労省夜間衛生管理課の職員、つまり公務員です。あかりが職務上で知り合ったオキナガの一人が、外見は少年ながら実年齢88歳の雪村魁。雪村は、12年ごと、未年に繰り返される猟奇殺人事件、通称「羊殺し」の犯人を追っていて、それが全体を貫くメインプロットになってます。その過程で出会う事件の謎解きが、ひとつひとつのエピソードとなって、少しずつ謎が解き明かされていくわけです。
吸血鬼といっても、日光に弱くて再生力が異常に強い、という以外には特殊能力はないわけですが、不老不死の人間が日本だけで推定10万人いる社会、というのを設定して、日常描写を積み上げていきます。社会への帰属意識が薄くなりがちなオキナガと、組織として動く役所や警察などを組み合わせて、説得力のあるリアリティを出していくのはゆうきまさみの真骨頂と言えるでしょう。その上で、しっかりミステリしてる、SFミステリですね。
社会に人知れず人ならざるものが混じってる、という話自体は昔からありましたし、作者の前作「鉄腕バーディー」でも人知れず宇宙人がいつの間にか混じってましたが、混じってるのが当たり前という設定の話が出て来たのは最近の流行りかな。「ダンジョン飯」で当てた九井諒子短編にはそういう話が多かったし、「亜人ちゃんは語りたい」とか「セントールの悩み」とか、異世界モノの延長みたいな形で結構増えてる気がします。ただ、ゆうきまさみとか九井諒子とかには外挿による異化作用みたいな発想があるんだけど、最近のハヤリは異世界と日常がそのまま融合してるような感じで、ちょっと別モノかなあとも思います。

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

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herecy8.hatenablog.com
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