平山瑞穂「ドクダミと桜」

ドクダミと桜(新潮文庫)

ドクダミと桜(新潮文庫)

ドクダミこと多美ちゃんと、咲良ちゃんは小学校時代は方や問題児、方や優等生であっても大の親友だった。けれど咲良が進学校へと進み、いつしか疎遠になっていった。19年ぶりに再開した時、多美ちゃんは高校中退のシングルマザー、咲良ちゃんは妊活に悩む大学図書館司書、互いの境遇は大きく違っていた。
苦労の多い人生を歩んできた多美にとって、桜と遊んだ記憶は貴重な唯一の温かい思い出だった。一方咲良には、多美に対して負い目に思うことがあった。思い出話で一晩盛り上がって、そのまま別々の生活に戻っていきそうなところで、いろいろ事情が交錯してその後も二人は繰り返して会うことになる。
ある意味最後までお互い食い違ったままだし、無心に遊べた子供の頃にはもう戻れはしないけれども、それでも一瞬通じ合うことがある。咲良と多美と代わる代わる語り手となってはいるが、葛藤を抱えていた咲良が和解を手に入れるまでの小説である。