五示正司・びび「ひとりぼっちの異世界攻略」

とある高校の昼休みに、突如異世界転送の魔法陣が教室を包み込む。クラス全員がそのまま異世界へと送られるが、今さら異世界転生とか付き合えないと無駄に抵抗した主人公は、一人だけ別の場所に送られてしまい、貰えるはずのチートスキルは「体操」とか「歩行」とか「器用貧乏」「木偶の坊」と、残り物を押し付けられることになった。他のクラスメートとも逸れてしまった主人公は、ハズレの地味スキルを組み合わせながら、単独で異世界攻略を始めることになる。
とにかく一人で際限なくボケまくりツッコミまくる。書籍版だと読んでてだんだん疲れてくるので、マンガ版がちょうど良い感じ。ただ、書籍版の方がスキルの使い方を試しつつアレコレ工夫して、バトルの練習するプロセスが試行錯誤も含めて詳しい。わりとラブコメ。とりあえず3巻で最初の話が一区切りつく。

アニメ「裏世界ピクニック」

原作は小説、コミック版共に追いかけてます。第1話冒頭、空魚オフィーリアのシーンの違和感が引っかかった。ロングになった時、キャラが背景にうまく乗っからずに浮いているように見えた。人だけが映らない鏡面でできた立方体とか、キチンと見せてくれないし。裏世界の怪物の異音というのも特に無いし、裏世界への考察とかネットロアの蘊蓄とかも大きく端折られている。百合メインに絞ってるみたい。
3話目で原作者オリジナル脚本を入れてきたり、楽しめるところもあるけれど、あちこち削ぎ落として結構駆け足で話が進んでいく。「ステーション・フェブラリー」は結構丁寧にやるみたいだけど。

アニメ「ゆるキャン△season2」

キャンプ飯とか、食べ物がやたら美味しそうな飯テロアニメ。1期の雰囲気そのままで、2期もまったり。根っからのインドア派なのに、寒そうな冬キャンプ見て、行ってみたいとか思っちゃうんだから、大したもんだと思うよ。
実在する風景を結構リアルに描いてるのに、デフォルメかかった萌えキャラがすんなり馴染んでるのも、よく考えれば不思議で、こういうのってやっぱり京アニが拓いたフロンティアなのかなあ。

アニメ「蜘蛛ですが、なにか」

原作は小説版、コミックとも既読、WEB版も追っかけてます。
洞窟だの魔物だのバリバリCG使ってるのはゲームっぽさの演出か。細かいことは全部流して結構ハイテンポでどんどん話を進めていく。まあまともにやったら、魔王が出てくるまででもかなりボリュームあるしなあ。勇者パートと合流するとこまではやらないと、まとまんないだろ。
しかし、蜘蛛子さん主人公なのに、勇者パートの尺に押されてないか。蜘蛛子さんはバトルの見せ場だけやったら、あとは勇者パートのドラマが続くってのはどうなのよ。
あと、エンディングの異様なノリもよく分からん。蜘蛛子さん、鋼のメンタルでポジティブで、小説だと一人称ではやたら饒舌なんで忘れるんだけど、実は無口な陰キャラ設定なんだよね。ハイテンションで歌って踊ってというのは、なんか違くないか。

アニメ「無職転生 異世界行ったら本気だす」

原作小説未読、コミック版は少し読んだ。異世界転生もののパイオニア、というだけに後々テンプレ化していく描写を一から積み上げているのがかえって新鮮。アニメの描写も丁寧でいい。アニメでの小物や建物など中世ヨーロッパ風の見せ方はこれまで見たファンタジー作品の中でも抜きん出て説得力高いんだけど、なんだか妙に生々しい下ネタが浮いてる感じで抵抗感が強い。ギャルゲで培ったテクで人誑しってのも今イチ乗りづらくって。主人公にゲスいおっさんと爽やか系少年が同居してるのを、モノローグとダイアローグで別の声優に割り振るという演出は原作の持ち味を的確に表してると思うので、そこで引っかかるとなかなか見るのが辛くなる。

吉川景都「鬼を飼う」

昭和初期を舞台にした伝奇マンガ。妖怪のような「奇獣」を扱う不思議な鳥獣商四王天の店に出入りするようになった大学生鷹名は、美しく危険な奇獣たちに惹かれていく。全7巻。
最初の方は珍しい奇獣の扱い方とか飼い主のトラブルを解決したり後始末したり、といったコミカルでちょっと怖い妖怪マンガの体で始まる。そこに、奇獣商を追いかける特攻警察とか記者が絡んできて、設定が少しずつ明かされてくる。なぜかいつも現場で寝ている記者とか、コミカルな調子を崩さず、ゆっくりと風呂敷を広げて行って最後は壮大な幻想譚として綺麗にまとめた。
絵柄が少女マンガ、というか女性マンガ風だと思ったら、作者はLaLaでデビューしたんですね。twitterで子育。てマンガ書いたりとか、結構幅広く活動しているみたい。
同作者の「葬式探偵モズ」は、日本各地の葬式習俗に詳しい民俗学者が葬式の蘊蓄で推理するミステリ。電書で出版社を跨いで出てる。時系列順ならばKADOKAWA版の「葬式探偵モズ」のあとマーガレットコミックスの「挨拶」「憂鬱」「帰還」の三部作を読むのが良いです。収録作被ってないし。

ツカサ「明日の世界で星は煌めく」

街中に屍人が溢れ、終わってしまった世界で、”魔術師”南戸由貴が親友の榊帆乃夏の姉を探して冒険する話。ずっといじめられて孤立していた女子高生の南戸由貴は、父親の遺した”魔術”によって、屍人だらけになってしまった街でただ一人生き残っていた。ずっと自分以外は敵だと思っていた由貴にとって、屍人の世界でのサバイバルは、倒す相手がクリアになった状況で魔術という武器を得て、むしろ救われたように思っていた。そんな時、屍人に囲まれた女子高生を見つけ、成り行きで助け出した。それが榊帆乃夏だった。帆乃夏は屍人に襲われた時に生き別れになった姉を探して神奈川へと向かう途中だという。由貴は、一緒に探しに行くことを決意する。
子供の頃からずっとキツい状況をサバイバルしてきた由貴のメンタルの強さが物語を引っ張っていくのが小気味良い。
由貴の魔術は、杖で触れた物を自在に操るというもので、岩や瓦礫を宙に浮かべて、加速してぶつけるとか、空気を操ることで、風で火を操って燃やし尽くすとか、何かマックスウェルの悪魔的な、物理法則に従うけどエントロピーだけは無視、という感じ。屍人を防ぐ結界とか、巨大化する使い魔とかは分からん。
読後の感想は、「裏世界ピクニック」を強く想起させる。なんか拗らせてる主人公と、美人でなんでも出来て銃器を振り回す相棒とのバディものだし、その美人の彼女が崇拝している女性を探してるという構図も共通してる。なんか探してる彼女がラスボスっぽい雰囲気なのも似てるし。なんか冒険百合の一つのジャンルになるのかも。とりあえず裏世界ピクニックが好きな人にはオススメ。